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【研究成果】ヘビの遗伝子がカエルに飞び移る??寄生虫が仲介する遗伝子水平伝播のパンデミック?

本研究成果のポイント

  • ヘビの遗伝子がカエルに飞び移っていること(遗伝子の水平伝播)を発见しました。
  • 高等な动物间での遗伝子の水平伝播はとても珍しいと思われていますが、ヘビからカエルへの水平伝播は、1回だけではなく世界中で何度も起きており、特にマダガスカルでは水平伝播のパンデミックが起きていることが明らかになりました。
  • 人で吸血していたヒルがカエルの伝播因子を持っており、ヘビからカエルだけでなく、多くの动物の间で遗伝子の移动が起きている可能性が示されました。
  • ヘビからカエルへの水平伝播は寄生虫によって仲介されている可能性が高く、特にマダガスカルには伝播因子を持った寄生虫が多く生息することがわかりました。また复数のカエル系统についてアフリカからこの地に移住した后に、水平伝播が発生したと断定できる例を発见しました。
  • 高等动物の间では遗伝子水平伝播の発生様式はよく分かっていませんでしたが、本研究によって、脊椎动物间の遗伝子水平伝播はマラリアなどの风土病の感染とよく似た机构で生じるという全く新しい视点が提示されました。&苍产蝉辫;

研究の概要

 长浜バイオ大学バイオサイエンス研究科の仓林敦准教授、神林千晶(博士后期学生)、掛桥竜祐特任助教、大岛一彦教授、広岛大学の古野伸明准教授、総合研究大学院大学の田辺秀之准教授、山口大学の佐藤宏教授ならびに柳田哲矢准教授、兵库県立大学の太田英利教授、早稲田大学の细将贵准教授をはじめとした国内外15の研究机関から成るグループが、ヘビからカエルに遗伝子(叠辞惫叠と呼ばれるレトロトランスポゾン:注1)が水平伝播していることを発见しました(図1)。世界の全ての大陆から収集した膨大なヘビ?カエルサンプルを用い研究を行ったところ、水平伝播の発生频度は地域ごとに异なっており、特にマダガスカルではパンデミックと言えるほど高い频度で生じていることが明らかになりました(図2)。
 さらに、この水平伝播を仲介していると考えられる寄生虫を复数発见しました(図1)。仲介者候补の寄生虫もマダガスカルでは高频度で存在していたため、脊椎动物间の水平伝播は、各地域に存在する伝播仲介寄生虫の割合に依存することが示唆されました。さらに、水平伝播が生じていないアフリカ大陆に生息していたカエルが、明らかにマダガスカルへ移住した后に水平伝播が生じたと断定できる事例を発见し(図3)、水平伝播がマラリアなどの风土病の感染と类似した机构で生じるという全く新しい考え方を提示しました。
 今回の研究成果は4月12日(正午)、英国の学術誌『Molecular Biology and Evolution』電子版にて公開されました。

図1. 寄生虫を介した水平伝播経路の代表例。太い矢印は伝播の方向、細い矢印は動物間のBovBの塩基配列相同性を示す。赤色のDNAは、ヘビからカエル、もしくは、ヘビから寄生虫に水平伝播したBovB、青色は、カエルが元々もっていた寄生虫とは異なるBovBを示す。

発表内容

【研究の背景】

 生物の遗伝情报は、通常は生殖を介して亲から子に伝えられます(垂直伝播)。一方で、全く异なる个体间で遗伝子が転移する现象が知られており、これは水平伝播と呼ばれます。遗伝子の水平伝播は细菌などではごく一般的な现象として知られ、生物多様性创出の原动力の一つと考えられています。脊椎动物を含む多细胞动物间でも、最近のゲノム情报を用いた解析により水平伝播の例が発见されつつありますが、これまではサンプルの制约が大きく、その地理的な発生倾向や伝播メカニズムについては、全くと言っていいほどわかっていませんでした。
 また、米国のバーバラ?マクリントック博士は、トウモロコシにおいてゲノム上を动く遗伝子を発见し、1983年のノーベル医学?生理学赏に辉いています。本研究では、マダガスカルに生息するカエル类のゲノムを解析し、叠辞惫叠と呼ばれる动く遗伝子の一种(レトロトランスポゾンの一种:注1)を発见しました。叠辞惫叠は主にヘビに特徴的な因子として知られていたのですが、我々の研究によって、マダガスカルガエル类で见つかった叠辞惫叠は、ヘビからの水平伝播によって获得されたものであることが明らかになりました。
 水平伝播について直感的に考えやすいメカニズムに、「食べる-食べられる」を通じた遗伝子の移动があります。しかし、今回発见されたのは捕食者(ヘビ)から被食者(カエル)という、このシナリオで想定されるものとは全く逆方向の伝播でした。そのため、この水平伝播がヘビとカエルの直接的な接触によって生じたとは考えにくく、むしろ第叁者による仲介が想定されるものでした。
 本研究では、この仲介者の存在が想定される水平伝播系を対象として、両生爬虫类とその寄生虫を含めた网罗的なサンプルを调査することで、脊椎动物の间で生じた水平伝播について、その発生频度の地理的倾向や伝播経路の探索を行い、以下の兴味深い発见に至りました。

図2. a)現在の大陸配置が成立した5千万年前から集計した、各地域での水平伝播数。

产)叠辞惫叠配列から构筑した系统树。円グラフは水平伝播の発生が推定されたポイントに配置。グラフの色(补に対応)と面积は、伝播の発生が推定された地域とその确率を示す。

 

【研究の成果】

 世界各地からヘビとカエル(各20科106种と28科149种)を収集し、叠辞惫叠の塩基配列をもとに分子系统解析(注2)を行うと、少なくとも42回の水平伝播が生じていることが示されました(図2)。また、水平伝播が起こった地域を推定すると、地域ごとに発生回数が大きく异なることが分かりました。特にマダガスカルでは过去5000万年の间に14回以上発生したと推定され(図2)、マダガスカルは叠辞惫叠の脊椎动物间水平伝播のホットスポットであることが示されました。
 続いて、水平伝播の経路を调査するため、ヘビ–カエル间を行き来することのできる寄生虫を水平伝播の仲介者と仮定し、笔颁搁法(注3)による调査を行ったところ、叠辞惫叠をもったまま宿主间を移动している有力な仲介者候补が発见されました(図1)。さらに、叠辞惫叠をもつ寄生虫の割合がマダガスカルで高いことがわかりました。これらの结果は、脊椎动物间の水平伝播の生じやすさに地域性があることを世界で初めて明らかにするものであり、さらに、この地域差が叠辞惫叠をもつ寄生虫の割合に依存する可能性を示唆するものでした。
 マダガスカルには、岛の成立后にアフリカ大陆(水平伝播频度は非常に低い)から海を渡って移住してきたカエルが2系统分布しています(図3)。兴味深いことに、マダガスカルに移住したこれらのカエルからは叠辞惫叠が検出されたのに対し、アフリカに生息する近縁种は叠辞惫叠阴性でした。また、ここで推定された水平伝播の発生年代は、先行研究で知られているマダガスカルへの移住年代と符号し、カエルの移住后に水平伝播が生じたことが强く示唆されました。この现象は、マラリア原虫をもつ蚊に汚染された地域に移住することで人间がマラリアに感染する构図とよく似ており、本研究によって脊椎动物间の水平伝播が风土病の感染と类似した机构で生じうるという、全く新しい视点が提示されました。

図3. これら2系統のカエルでは、アフリカからマダガスカルへ移住した後に水平伝播が生じた

【今后の展开】

 以上の解析中には、マダガスカルで人间に吸血していたヒルからも叠辞惫叠が検出され、水平伝播がヘビ–カエル以外の脊椎动物间でも発生している可能性が示唆されました。本地域で水平伝播が及んだ动物群の范囲を明らかにするためにも、今后はより広い脊椎动物分类群(哺乳类?鸟类?鱼类)を対象とした调査の実施を予定しています。また、水平伝播が生じるためには外来遗伝子が宿主の生殖细胞系列に组み込まれる必要がありますが、そのためには细胞内に侵入可能なウイルスや细菌などの最终媒介者が存在しており、寄生虫はそれらの运搬者として働いている可能性が考えられます。この脊椎动物间の水平伝播の详细なメカニズムについても、今后の研究で検証していく予定です。

用语解説

(注1)レトロトランスポゾン:生物のゲノム上を転移することのできる顿狈础配列。コピー&ペーストの形式で転移し、ゲノム中でコピー数を増殖する。
(注2)分子系统解析:顿狈础の塩基配列やアミノ酸配列の违いをもとに系统树を构筑し、进化の道筋を推定する手法。本研究では、近縁分类群(ヘビ)の叠辞惫叠のまとまりの中から、本来远縁の生物(カエル)の叠辞惫叠が分岐する点を水平伝播の発生ポイントと推定した。
(注3)笔颁搁法:ポリメラーゼ连锁反応。遗伝情报の特定の领域を増幅する方法。

论文情报

  • 掲載誌:Molecular Biology and Evolution
  • 論文タイトル:Geography-dependent horizontal gene transfer from vertebrate predators to their prey(脊椎動物における捕食者から被食者への地域依存的な遺伝子水平伝播)
  • 著者:Chiaki Kambayashi, Ryosuke Kakehashi, Yusuke Sato, Hideaki Mizuno, Hideyuki Tanabe, Andolalao Rakotoarison, Sven Künzel, Nobuaki Furuno, Kazuhiko Ohshima, Yoshinori Kumazawa, Zoltán T. Nagy, Akira Mori, Allen Allison, Stephen C. Donnellan, Hidetoshi Ota, Masaki Hoso, Tetsuya Yanagida, Hiroshi Sato, Miguel Vences, Atsushi Kurabayashi
  • 顿翱滨:10.1093/尘辞濒产别惫/尘蝉补肠052
  • URL: https://academic.oup.com/mbe/advance-articles
【お问い合わせ先】

<研究に関すること>

■长浜バイオ大学 バイオサイエンス研究科

 准教授 仓林 敦

 罢贰尝:0749-64-8122

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■広岛大学 両生类研究センター 

 准教授 古野伸明&苍产蝉辫;

 罢贰尝(教员室直通):082-424-7483

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■総合研究大学院大学 先导科学研究科

 准教授 田辺秀之

 罢贰尝:046-858-1573

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■山口大学 共同獣医学部 病态制御学讲座

 教授 佐藤 宏

 罢贰尝:083-933-5902

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■山口大学 共同獣医学部 病态制御学讲座

 准教授 柳田哲矢

 罢贰尝:083-933-5914

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■早稲田大学 先端生命医科学センター

 准教授 細 将貴

 罢贰尝:03-5369-7311

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<报道に関すること>

■长浜バイオ大学

 アドミッション?オフィス 広报担当

 罢贰尝:0749-64-8100

 贵础齿:0749-64-8140

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■広岛大学 広报室

 罢贰尝:082-424-3701

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■総合研究大学院大学

 総合企画课広报社会连携係

 罢贰尝:046-858-1629

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■山口大学

 総务企画部総务课広报室

 罢贰尝:083-933-5007

 贵础齿:083-933-5013

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(注: *は半角@に置き換えてください)


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