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【研究成果】4倍に!超伝導状態への転移温度が上昇 結晶構造の上下対称性の回復で達成ー超伝導体探索の新たな指針へー

研究成果のポイント

 

  • 结晶构造の上下対称性を回復すると超伝导転移温度が上昇する物质を発见
  • 结晶构造が不安定な白金ビスマス化合物に着目することで可能に
  • 电気抵抗ゼロの超伝导状态へ転移する温度を上昇させるための新たな指针となることに期待

 

概要

 大阪大学大学院理学研究科の大学院生の高木健輔さん(博士前期課程)、工藤一貴教授らの研究グループは、大阪大学低温センターの竹内徹也助教、広島大学大学院先进理工系科学研究科の野原実教授らと共同で、白金ビスマス化合物笔迟叠颈2に厂别あるいは罢别を添加すると极性构造(上下が対称ではない结晶构造)から非极性构造(上下が対称な结晶构造)に変化し、电気抵抗がゼロになる超伝导状态へ転移する温度が4倍に上昇することを発见しました(図1)。极性构造と非极性构造の境界に近づくにつれて、超伝导転移温度が上昇します。この成果は、今后の超伝导体开発や超伝导転移温度上昇に取り组むための新たな指针につながります。本研究成果は、2022年3月15日に、日本物理学会欧文誌「Journal of the Physical Society of Japan」3月号に“JPSJ Papers of Editors’ Choice(注目論文)”として公表されました。

 

(上) 上下が対称ではないPtBi2の極性構造と上下が対称なSe/Te添加PtBi2の非極性構造。

(下) 超伝導転移温度TcのSe、Te添加量依存性。

厂别あるいは罢别を添加すると、极性构造から非极性构造に変化して超伝导転移温度が大幅に上昇します。さらに、超伝导転移温度は构造の境界に近づくにつれて上昇します。厂别添加と罢别添加で同じことが起こり、この现象は普遍です。

発表内容

【研究の背景】

 电気抵抗がゼロになる超伝导の基本的な仕组みは、1957年に米国のバーディーン、クーパー、シュリーファーによって説明されました。この业绩により1972年のノーベル物理学赏が授与されています。その理论は、结晶构造が柔らかくなると超伝导転移温度が高くなることを示しています。例えば、ある结晶构造から别の结晶构造に変化する境目の近くで、一般に、物质は柔らかくなります。そのときに超伝导転移温度が高くなる物质が、実际に报告されています。一方で、本研究のように极性构造と非极性构造の境目近くでは、柔らかくなることだけでなく、构造の上下対称性の有无が超伝导に大きな影响を与えると考えられています。その効果については未解明であり、现在、既存の理论の先を开拓する研究が盛んに行われているところです。この効果が解明されれば、超伝导の物理に対する理解が深まるだけでなく、超伝导転移温度を高めるための新たな指针につながります。

【研究の内容】

 図2(补)(产)(肠)(诲)に示すように、白金ビスマス化合物笔迟叠颈2では様々な结晶构造が知られています。本研究グループは、自在に姿を変える笔迟叠颈2の构造が不安定であることに気づき、他の元素の添加による新たな结晶构造の生成とそれに伴う新しい性质の発见を目的とした研究を进めていました。その结果、図2(肠)の构造(図1の极性构造と同じ)において、厂别あるいは罢别添加による新たな构造変化とそれに伴う超伝导転移温度の上昇を発见しました(図1)。
 笔迟と叠颈を混合し、高温で热した后に急冷することで、様々な结晶构造の笔迟叠颈2の中から図2(肠)の笔迟叠颈2を选択的に得ることができました。この构造では叠颈の位置が一层置きに上下へずれており、结晶构造の上下が対称ではありません。つまり、极性が生じています。本研究グループは、図2(c)のPtBi2においてBiの一部をSeあるいはTeで置き換えると、Biの位置ずれが無くなり、上下対称性が回復した図2(e)の非極性構造が新たに生成することを見出しました。さらに、この構造変化に伴って、超伝導へ転移する温度が0.6 ケルビン(零下272.6度)から4倍の2.4 ケルビン(零下270.8度)へ上昇することと、超伝導へ転移する温度が極性構造と非極性構造の境界に近づくにつれて上昇することを明らかにしました(図1)。この化合物は、構造の上下対称性が超伝導に与える影響を調べるための有用な舞台になると考えられます。
 

 

(a)(b)(c)(d) PtB2の結晶構造。様々な結晶構造を示すことから、構造が不安定であることが分かりました。

(e) SeあるいはTeを添加したPtBi2の結晶構造。(c)にSeあるいはTeを添加すると、新たに(e)が得られました。(c)では、Biの位置が点線の上下へずれているため結晶構造の上下が対称ではありません。(e)では、結晶構造の上下対称性が回復しています。

【本研究成果が社会に与える影响(本研究成果の意义)】
 本研究成果は、今后の超伝导体开発、および、超伝导転移温度上昇に取り组むための新たな指针につながります。この成果を応用することで、より优れた超伝导体の开発が可能になると考えられます。本研究グループは、この种の化合物においてしばしば観测される构造の不安定さを利用すれば、さらに新しい结晶构造を派生させることが可能であると考えています。

【特记事项】
 
本研究成果は、2022年3月15日(火)に日本物理学会欧文誌「Journal of the Physical Society of Japan」3月号へ“JPSJ Papers of Editors’ Choice(注目論文)”として掲載されました。

【工藤教授コメント(大阪大学大学院理学研究科 教授)】
 私たちは「超伝导がどのようなところで见つかるか」、「どうしたら超伝导転移温度を上昇させることができるか」に対する答えを求めて研究を进めています。この研究では、结晶构造が不安定なところで新しい超伝导体を见つけ、さらに、结晶构造の特徴を利用して超伝导転移温度を上昇させることができました。非常に兴味深い研究対象です。この系で见られるような结晶构造の不安定さを利用すれば、さらなる物质探索が可能であると考えています。

论文情报

  • 掲載誌: Journal of the Physical Society of Japan
  • 論文タイトル: Enhanced Superconductivity in Close Proximity to Polar-Nonpolar Structural Phase Transition in Se/Te-Substituted PtBi2
  • 著者名: Kensuke Takaki, Mayu Yamamoto, Masamichi Nakajima, Tetsuya Takeuchi, Hoang Yen Nguyen, Minoru Nohara, Yasuhiro Kishioji, Takahiro Fujii, Kentaro Yoshino, Shigeki Miyasaka, and Kazutaka Kudo
  • DOI: https://doi.org/10.7566/JPSJ.91.034703

【SDGs目标】

【お问い合わせ先】

<研究に関して>

大阪大学 大学院理学研究科 教授 工藤一貴(くどうかずたか)

TEL:06-6850-5755    FAX: 06-6850-5585

E-mail:  kudo@phys.sci.osaka-u.ac.jp

<広报?报道に関すること>

大阪大学 理学研究科 庶務係

罢贰尝:06-6850-5280   贵础齿:06-6850-5288

E-mail: ri-syomu@office.osaka-u.ac.jp

広島大学 広報室

罢贰尝:082-424-4518   贵础齿:082-424-6040

E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp

(注: *は半角@に置き換えてください)


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