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【研究成果】层状复水酸化物が水中で示す硝酸イオンに対する“好き嫌い”の機構を解明 ~有害な硝酸イオンを海水中からも除去できる材料として期待!~

概要

 島根大学総合理工学部の笹井亮教授、田中宏志教授、藤村卓也助教、広島大学大学院先进理工系科学研究科の森吉千佳子教授、立命館大学理工学部の藤井康裕講師、高輝度光科学研究センター回折?散乱推進室の河口彰吾主幹研究員らの研究グループは、構成金属であるニッケルとアルミニウムの構成比を変えることで硝酸イオンを水中から選択的に除去できる能力をもつ层状复水酸化物注1)を開発し、その能力が海水のような他の陰イオンが大量に存在する状況でも有効に働くことを明らかにしました。
 この层状复水酸化物が水中で示す硝酸イオンに対する“好き嫌い”(硝酸イオン选択性)は、塩化物イオン、硝酸イオンおよび水和水が层间でどれくらい自由に动くことができるかという性质の差によって説明できることをつきとめました。层状复水酸化物は、层间の塩化物イオンと水中の硝酸イオンが交换することで硝酸イオンを除去しますが、その様子も放射光X线を用いて时々刻々観察することに成功しました。さらに、様々な阴イオンが多く含まれる海水中でも実験を行い、层状复水酸化物の硝酸イオン选択性が海水中でも维持されることを明らかにしました。このニッケルとアルミニウムからなる层状复水酸化物は、ニッケルとアルミニウムの构成比を整えることで、様々な水环境から富栄养化の原因物质の一つである硝酸イオンを选択的かつ高効率に除去できることから、厂顿骋蝉、特に6(安全な水とトイレを世界中に)と14(海の豊かさを守ろう)などを実现できる革新的材料といえます。
 本研究成果は、2022年5月25日に日本化学会が出版するBulletin of the Chemical Society of Japan誌のSelected Paper(優秀論文)として選出され、掲載されました。

研究の背景

 “水”は、私たちの生命维持に欠かせない重要な物质です。この水の安全性や清澄性の确保は非常に重要であり、2030年までの达成目标として世界が掲げる厂顿骋蝉にも、6(安全な水とトイレを世界中に)や14(海の豊かさを守ろう)などとして、その重要性がうたわれています。これを実现するために世界中で日々开発されている水処理材料のうち、层状复水酸化物は无机化合物の中ではまれな“阴イオン交换特性注2)”を示す物质です。この特性から日本をはじめとした世界中で古くから水処理への応用が期待されてきた物质です。この层状复水酸化物を実际の水処理素材として、様々な水中に存在する有害阴イオン种の除去に利用するためには、层状复水酸化物が示す特定の阴イオン种に対する选択性を制御し、目的とする阴イオン种を水中から除去する层所复水酸化物を创製する必要があります。

研究の成果

 硝酸イオンなどに代表される硝酸性窒素は、富栄养化の原因物质の一つであるため湖沼や湾などの闭锁水域、陆上养殖、アクアリウムなどにおいてその除去が求められています。しかし、様々な阴イオン种が共存する水から硝酸イオンを効率的に除去する物理化学的処理に利用可能で有効な素材はほとんどない状况でした。この课题の解决に向けて、私たちは层状复水酸化物に注目して研究を行ってきました。
 本研究で私たちが注目した层状复水酸化物は、2価金属であるニッケルと3価金属であるアルミニウムを构成元素とする金属水酸化物(図1)です。构成元素であるニッケルとアルミニウムの构成比が2:1と4:1の层状复水酸化物を合成し、层间の塩化物イオンと水中の硝酸イオンとの阴イオン交换反応を调査した结果、ニッケルとアルミニウムの构成比が4:1の场合に、高い硝酸イオン选択性を示すことを见出しました(図2)。このニッケルとアルミニウムの构成比による硝酸イオン选択性の差异の原因を追究すべく、大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8注3)の粉末结晶构造解析ビームライン叠尝02叠2を用いて得られた精密结晶构造と立命馆大学で実施されたラマン分光法注4)により得られた层间に存在する水分子と硝酸イオンの状态から、塩化物イオンから硝酸イオンへの阴イオン交换が进行しやすいかどうかが、层间の塩化物イオンと硝酸イオンとの运动性の差により説明できることを初めて明らかにしました(図2)。さらに大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8の粉末结晶构造解析ビームライン叠尝02叠2でミリ秒オーダーでの放射光X线回折実験を行い、様々な硝酸イオン浓度において塩化物イオンから硝酸イオンへの阴イオン交换反応时の构造変化の追跡にも成功しました。その结果、阴イオン交换反応は数秒以内という非常に速い反応であり、反応のスピードは选択性が高い方がわずかに早いのですが、反応自体は选択性が违っても同じように进行しました。
 このような高い硝酸イオン选択性を有するニッケルとアルミニウムからなり、その构成比が4:1の层状复水酸化物ですが、他の共存阴イオンが存在する、例えば海水のような水からも硝酸イオンが除去できなければ、実际の水処理素材として利用することはできません。そこで人工海水中からの硝酸イオンの除去について调査を行った结果、塩化物イオンや硫酸イオンなどを含む人工海水中でも今回の层状复水酸化物が示す硝酸イオン选択性は维持されました(図3)。このことは、今回私たちが合成したニッケルとアルミニウムからなり、その构成比が4:1の层状复水酸化物が実用素材として期待できることを示すものです。

図1 一般的な层状复水酸化物の结晶构造.本研究では、2価金属(惭II)はニッケル、3価金属(惭III)はアルミニウム、阴イオン种(础n?)は塩化物イオンもしくは硝酸イオン

図2 得られた精密结晶构造と选択性および层间の阴イオンの运动性の関係

図3 人工海水中での硝酸イオン除去能.ニッケルとアルミニウムの构成比2:1(〇)、4:1(□)

今后の展望

 今回私たちは、ニッケルとアルミニウムからなる层状复水酸化物の硝酸イオン选択性が构成元素比により制御できることとその起源、さらにはこの硝酸イオン选択性が人工海水中でも维持されることを世界で初めて明らかにすることに成功しました。
 この结果は、层状复水酸化物の构成元素やその构成比を制御することにより水処理法として利用される物理化学的処理(イオン交换処理)のための有用な素材として期待できることを示したものとなります。しかし、実际の水処理素材として利用するためには、例えば通水処理に适用可能な材料化(粒状セラミックス化や膜化など)といった课题を解决する必要があります。また、水処理分野で除去されるべきその他の阴イオン种、例えばフッ化物イオン、ヒ酸イオンや亜ヒ酸イオンなどを选択的に除去できる层状复水酸化物の开発も必要となります。
 今回の结果は、层状复水酸化物の阴イオン选択性を制御するための设计指针の确立のための大きな一歩でもあります。今后は、设计指针の确立に、现在注目されているマテリアルインフォマティクス、计算机シミュレーション、今回も利用した放射光X线回折など実际の现象を可视化できる最先端计测技术などを合わせることで、层状复水酸化物が秘める可能性を示していきたいと考えています。

用语解説

注1) 层状复水酸化物:2価金属水酸化物が形成する二次元層中の2価金属の一部が3価金属に置換することにより阴イオン交换特性を示す無機化合物。マグネシウムとアルミニウムからなる层状复水酸化物は、胃薬の主成分として知られている。
注2) 阴イオン交换特性:固体内に取り込まれている阴イオン种が、水中に存在する他の阴イオン种と交换し、取り込まれるという性质。
注3) 大型放射光施設 SPring-8:理科学研究所が所有する兵库県の播磨科学公园都市にある世界最高レベルの性能の放射光を生み出す大型放射光施设。利用者选定等は闯础厂搁滨が行っている。厂笔谤颈苍驳-8は、放射光を用いた物质化学などの基础研究から产业利用まで幅広い研究が行われている。
注4) ラマン分光:レーザー光を用い、物質中の各種化学種の化学結合状態を知ることができる手法。本研究では、层状复水酸化物の層間に存在する水分子や硝酸イオン分子の化学状態、特に運動性の解明のために利用した。
 

研究プロジェクトについて

 本研究は、科学研究費(17H03129、18K18310、19K12628、20H04466)、JASRI(課題番号:2010A1287、 2010B1279、 2011B1703、 2012B1770、 2013B1677、 2014A1684、 2016A0074、 2017A1483、 2017A0074、 2017B1196、 2017B0074、 and 2018A1004)の支援を受け、実施されました。

论文情报

【論文タイトル】Origin of Selective Nitrate Removal by Ni2+-Al3+ Layered Double Hydroxides in Aqueous Media and Its Application Potential in Seawater Purification(Ni2+-Al3+层状复水酸化物による水中での選択的硝酸イオン除去の起源と海水浄化への応用の可能性)

【著者】笹井亮*1、藤村卓也*1、 佐藤宏亮*1、 新井栄作*1、菅田真子*1、中屋敷祐人*1、 帆足宏一*2、 森吉千佳子*3、 大石栄一*4、 藤井康裕*4、 河口彰吾*5、 田中宏志*1
    *1島根大学総合理工学部 *2広島大学理学研究科 *3広島大学大学院先进理工系科学研究科 
    &苍产蝉辫;*4立命馆大学理工学部 *5高辉度光科学研究センター
【掲載誌】Bulletin of the Chemical Society of Japan

【お问い合わせ先】

【研究に関すること】

 岛根大学総合理工学部物质化学科 笹井 亮 教授

 罢别濒:0852-32-6402 惭补颈濒:谤蝉补蝉补颈*谤颈办辞.蝉丑颈尘补苍别-耻.补肠.箩辫

 広島大学大学院先进理工系科学研究科 森吉 千佳子 教授

 Tel:082-424-7399  Mail:moriyosi*hiroshima-u.ac.jp

 立命馆大学 理工学部物理科学科 藤井 康裕 讲师

 Tel:077-561-3086  Mail:yfujii*fc.ritsumei.ac.jp

 高輝度光科学研究センター 回折?散乱推進室 主幹研究員 河口彰吾

 Tel:0791-58-2785  Mail:kawaguchi*spring8.or.jp

【报道に関すること】

 岛根大学 企画部企画広报课広报グループ

 罢别濒:0852-32-6603 惭补颈濒:驳补诲-办辞丑辞*辞蹿蹿颈肠别.蝉丑颈尘补苍别-耻.补肠.箩辫

 広岛大学 広报室

 罢别濒:082-424-3749 惭补颈濒:办辞丑辞*辞蹿蹿颈肠别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

 立命馆大学 広报课

 罢别濒:075-813-8300 惭补颈濒:谤-办辞丑辞*蝉迟.谤颈迟蝉耻尘别颈.补肠.箩辫

【报道に関すること、厂笔谤颈苍驳-8/厂础颁尝础に関すること】

 高辉度光科学研究センター 利用推进部普及情报课

 罢别濒:0791-58-2785 惭补颈濒:办辞耻丑辞耻*蝉辫谤颈苍驳8.辞谤.箩辫

(注: *は半角@に置き換えてください)


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