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【研究成果】肾尿细管再生メカニズムの解析から再生を促进する薬剤を発见~ゲノム机能解析を手掛かりとした新たな组织再生促进にヒント~

本研究成果のポイント

  • 损伤を受けた组织が再生する际には必ず再生遗伝子の発现が起こる。
  • 损伤を受けた肾尿细管细胞がどのようにして再生遗伝子を発现させるのかはわかっていなかった。
  • 両生类をモデルとしたゲノム机能解析から肾尿细管の再生では、転写因子碍尝贵15用语1が再生遗伝子を発现させるための键であること、碍尝贵15の标的遗伝子としてアドレナリン受容体を発见した。
  • 损伤させた両生类の肾尿细管にアドレナリン受容体の作动薬を作用させると、再生が促进されることがわかった。
  • 本研究で発见した再生メカニズムに対するヒトの新规薬剤の开発が期待される。

研究の概要

 山形大学医学部の越智陽城准教授と広島大学両生類センターの荻野肇教授らの共同研究グループは、東京大学の金井昭教特任准教授?鈴木穣教授の 文部科学省 科学研究費助成事業、学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム支援を受け、両生類をモデルに腎尿細管が再生する仕組みの解明とその再生を促進する薬剤を発見しました。
 本研究グループは、肾尿细管再生のメカニズムを探るために、両生类の肾尿细管细胞を使い网罗的オープンクロマチン解析用语2?エピジェネティック修饰用语3のクロマチン免疫沉降シーケンス解析用语4?网罗的発现解析用语5を行いました。すると、损伤后の再生过程でオープンになるクロマチン领域には碍尝贵15が结合すること、その标的遗伝子の1つアドレナリン受容体の働きを阻害すると再生が起こらないことを発见しました。さらに损伤を与えた肾尿细管にアドレナリン受容体の作动薬を作用させると、再生が促进されることを见出しました。
 以上の结果は、未解明だった损伤后の肾尿细管が再生に至るまでのメカニズムの一端が明らかになったことに加え、そのメカニズムに作用する薬剤を用いることで再生の促进が可能あることを示すものであり、ヒトにおける再生促进に贡献すると期待されます。
 本成果は、2022 年 8 月 8 日(現地時刻)に米国の国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.) (米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。

発表内容

【研究の背景】

 损伤を受けた组织が再生するとき、再生に働く遗伝子を発现します。これら再生遗伝子の多くは、组织や器官形成で使われた発生制御遗伝子用语6であることが知られています。発生制御遗伝子は、组织や器官が完成すると使う必要がなくクロマチン用语7が闭じられ発现が抑制された状态になります。损伤后に遗伝子を再発现させるためには、まずはクロマチンを开くことが必要ですが、そのメカニズムはわかっていませんでした。ヒトを含む哺乳类の肾尿再开の再生では、尿细管上皮细胞のなかに分裂速度の遅い细胞があり、それらが损伤尿细管の再生の源であることが知られています。両生类は哺乳类とよく似たシステムを採用しており、肾尿细管が损伤を受けると、残っている尿细管上皮细胞の一部を使い再生します。そこで本研究は両生类をモデルに、网罗的オープンクロマチン解析を足掛かりとして、肾尿细管の再生メカニズムの解明を行いました。

【研究の成果】

 両生类胚の肾尿细管の损伤前、再生中、再生が完了した细胞を用いて、网罗的オープンクロマチン解析、エピジェネティク修饰免疫沉降シーケンス解析、全搁狈础発现解析を行いました。これらデータを统合的に解析し、再生时にクロマチンが开く领域をエンハンサー用语8の候補として、そのエンハンサーの活性化因子の候補としてKLF、標的遺伝子の候補としてアドレナリン受容体(Adra1a)を発見しました。転写因子KLFは、山中4因子の1つとして知られていますが、この転写因子ファミリーは活性化因子型、抑制因子型、活性化と抑制の両方の機能を持つ二機能型があります。全RNA発現解析から再生中の腎尿再開細胞では、KLFファミリーのなかでも、klf4、 klf6、klf15、sp1、sp4が発現することがわかりました。そこで次にいずれのKLFが再生特異的なオープンクロマチン領域(エンハンサーの候補)に対する転写活性化能を持つのか調べたところ、Klf6とKlf15が活性化因子として働くことがわかりました。次に、再生特異的なオープンクロマチン領域が腎損傷後の再生エンハンサーとして働くのか調べるために両生類のトランスジェニック?レポーター解析用语9を行ったところ、再生特异的なオープンクロマチン领域は肾尿细管の损伤に応答して活性化するエンハンサーであることがわかりました。
 また、碍尝贵15の机能を抑制すると肾尿细管の再生が阻害されることもわかりました。碍尝贵15は沢山の遗伝子の発现を诱导しますが、その1つにアドレナリン受容体があります。アドレナリン受容体は碍尝贵15の制御下で再生遗伝子として働くことが予想されます。そこで、肾尿细管に损伤を与えた両生类胚に対してアドレナリン受容体の阻害剤をさせると、その再生が抑制されることがわかりました。また反対にアドレナリン受容体の作动薬をさせると、肾尿细管の再生が促进されることがわかりました。

【今后の展开】

 ヒトを含む哺乳类では、尿细管上皮细胞の一部の细胞が损伤后の再生に寄与することが知られています。両生类も哺乳类とよく似たシステムを採用しており、肾尿细管が损伤を受けると、残っている尿细管上皮细胞の一部を使い再生します。このことはヒトも本研究で発见した再生メカニズムを使っている可能性があります。碍尝贵15-アドレナリン受容体を标的とした医薬シーズ开発を実施することで、ヒトにおける损伤治癒を促进させる技术や医薬品の开発に繋がることが期待されます。

用语解説

[用语1] 転写因子はエンハンサーなどのDNA配列に結合するタンパク質で、遺伝子の発現のオン?オフを決定する因子である。KLF15は山中4因子の1つKLF4も属するZnフィンガー型転写因子 Krüppellike factor family of transcription factor (KLF)ファミリーに属する。

[用语2] 網羅的オープンクロマチン解析(ATAC-seq)はトランスポゼースを使い、クロマチンがオープンになっている領域を次世代シーケンサー(DNA配列を大量に読み取る装置)で網羅的に解析する技術である。全ゲノムレベルでエンハンサーやプロモーター領域を解析する方法として利用される。

[用语3] エピジェネティック修飾: 後天的にゲノム機能を制御する情報。DNAの塩基配列の変化を伴わず、DNAそのものやDNAが絡みついているヒストンタンパク質の修飾などにより、遺伝子の発現が制御される。

[用语4] クロマチン免疫沈降シーケンス解析(ChIP-seq解析): 目的とするヒストンタンパク質のエピジェネティック修飾に対する抗体を用いてタンパク質を含む断片を濃縮し、DNAの配列を次世代シーケンサで解析することによりヒストン修飾状態を全ゲノム的に得るエピゲノム解析手法。

[用语5] 網羅的発現解析(RNA-seq解析): 細胞内の全遺伝子発現レベルを次世代シーケンサで計測する手法。

[用语6] 発生制御遺伝子: 組織や器官の形成に関わる遺伝子。

[用语7] クロマチン: ゲノムDNAとヒストンなどのタンパク質の複合体で、DNAが折りたたまれている。この構造変化により転写因子のDNAへの結合が調整されることで遺伝子発現が制御される。

[用语8] エンハンサー: ゲノムの中には遺伝子の他に、非コードDNA領域と呼ばれる遺伝子以外の領域が存在する。この非コードDNA領域はヒトゲノムの98%を占め、遺伝子の発現をオンにしたり、オフにしたりする領域が存在する。遺伝子の発現をオンにする領域は、エンハンサーと呼ばれる。脊椎動物の間で比べると、遺伝子の総数やその機能は、よく似ていることが知られている。このことから、非コードDNA領域のエンハンサーなどの働きが、生命の鍵を握るといわれている。

[用语9] トランスジェニック?レポーター解析: ヒトゲノムには約2万個の遺伝子が存在すると言われている。一方、それら遺伝子を発現させるためのエンハンサーは、100万個程度あると予想されている。体の中でのエンハンサーの働きを知るために、エンハンサーと予想されるゲノム領域をgreen fluorescent protein(GFP)などの蛍光タンパク質遺伝子に連結した人工遺伝子 (レポーターと呼ばれる)を作製し、これを遺伝子改変技術でゲノムに導入する方法がある。これを、トランスジェニック?レポーター解析という。

【参考资料】

论文情报

  • 掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
  • 論文タイトル:Adrenergic receptor signaling induced by Klf15, a regulator of regeneration enhancer, promotes kidney reconstruction
  • 著者:鈴木菜花 (広島大学両生類センター, 技術員 (元山形大学医学部, 研究支援員)), 金井昭教 (東京大学大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授), 鈴木穣 (東京大学大学院新領域創成科学研究科, 教授), 荻野肇 (広島大学両生類センター, 教授), 越智陽城 (山形大学医学部, 准教授)
  • 顿翱滨:10.1073/辫苍补蝉.2204338119
【お问い合わせ先】

<研究に関すること>

 広島大学 両生類研究センター/大学院统合生命科学研究科 教授  荻野 肇

 罢贰尝:082-424-7482

 贰-尘补颈濒:辞驳颈苍辞丑补箩颈*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

<报道に関すること>

■広岛大学 広报室

 罢贰尝:082-424-3701

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(注: *は半角@に置き換えてください)


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