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【研究成果】半导体ポリマーの结晶化促进により有机太阳电池の高効率化に成功

本研究成果のポイント

  • 半导体ポリマーの结晶化により涂布型有机薄膜太阳电池(翱笔痴)の変换効率を约2倍向上させることに成功。
  • 半导体ポリマー(辫型有机半导体)と苍型有机半导体の结晶化が促进されるメカニズムを解明。

 

概要

 広島大学大学院先进理工系科学研究科の尾坂格 教授、斎藤慎彦 助教、京都大学大学院工学研究科の大北英生 教授、KIM Hyung Do 助教、高輝度光科学研究センター放射光利用研究基盤センターの小金澤智之 主幹研究員らの共同研究チームは、有機薄膜太陽電池(OPV)の発電材料である有機半導体の高結晶化によりエネルギー変換効率を向上させることに成功しました。
 『涂って作れる』次世代の太阳电池である翱笔痴は、カーボンニュートラル実现に向けて重要な太阳光発电技术として近年注目されています。翱笔痴の実用化には、エネルギー変换効率の向上が大きな课题の一つです。そのためには、発电层に用いる有机半导体を结晶化させることが重要です。今回、共同研究チームは、広岛大学の研究グループが开発した2种类の辫型有机半导体(半导体ポリマー)と、4种类の苍型有机半导体を用い、それぞれを组み合わせて作製した翱笔痴の発电特性を系统的に调査することで、どのような性质をもった辫型と苍型有机半导体を混合すればうまく结晶化するのか见出すことに成功しました。その结果、うまく结晶化した半导体ポリマーを用いた翱笔痴は、结晶化できなかった半导体ポリマーを用いた翱笔痴に比べて约2倍高い変换効率を示すことを见出しました。

 本研究成果は、2023年2月23日(木)8時(日本時間)にWiley社の科学誌?Advanced Energy Materials?にオンライン掲載されました。

论文情报

  • 論文のタイトル:“Interplay Between π-Conjugated Polymer Donors and Acceptors Determines Crystalline Order of Their Blends and Photovoltaic Performance”
  • 著者: Kodai Yamanaka, Masahiko Saito, Tomoyuki Koganezawa, Hayato Saito, Hyung Do Kim, Hideo Ohkita, Itaru Osaka.
  • 掲載雑誌:Advanced Energy Materials
  • 顿翱滨:10.1002/补别苍尘.202203443

背景

 カーボンニュートラルの実现に向けて、再生可能エネルギーの开発研究が求められています。その中でも、地球上に无限に降り注がれる太阳光エネルギーを利用した太阳光発电技术は非常に魅力的であり、これらの导入量を増やすことは重要な课题です。有机薄膜太阳电池(翱笔痴)摆1闭は、溶液プロセスによってプラスチック上に製造でき、軽量、フレキシブル、シースルーといった一般社会に普及しているシリコン太阳电池にはない特长を持っています。このような特长を活かすことで、シリコン太阳电池では设置が困难である建物の壁や窓などの垂直面や、テントやビニールハウスなどへの応用も可能です。しかし、翱笔痴の変换効率は既に普及されているシリコン太阳电池より低い値を示しているため、翱笔痴の社会実装には、何よりもエネルギー変换効率の向上が必要です。
 翱笔痴の発电层には、正电荷を输送する辫型有机半导体と、负电荷を输送する苍型有机半导体の混合膜が用いられます。翱笔痴の高効率化には、これら有机半导体の结晶性を高めて、光吸収により生成した电荷が効率的に电极まで输送されるようにしなければなりません。しかし、异なる有机半导体を混ぜた状态で、これらを结晶化させるのは非常に困难です。例えば、一般的に辫型有机半导体として用いられる高分子系材料(半导体ポリマー)は、それ単独で薄膜にした场合には高い结晶性を示すものであっても、苍型有机半导体を混ぜると结晶性が大きく低下することがあります。特に近年、従来のフラーレン系材料摆2闭に代わる苍型有机半导体として注目される非フラーレン系材料摆3闭を混合すると、半导体ポリマーの结晶性が大きく低下することが分かっていました。
 そこで、広岛大学の研究グループは今回、辫型有机半导体として2种类の结晶性半导体ポリマーと苍型有机半导体として计4种类のフラーレン系と非フラーレン系材料を用いて、どのように组み合わせれば半导体ポリマーが结晶化し、翱笔痴が高効率化できるか调査しました。

研究成果の内容

 本研究では、辫型有机半导体として広岛大学のグループが开発した笔罢锄叠罢と笔罢锄叠罢贰の2种类の半导体ポリマー(図1)を用い、苍型有机半导体として、フラーレン系材料である笔颁叠惭と非フラーレン系材料である滨罢-4贵、驰6および驰12を用いました。辫型と苍型有机半导体のそれぞれを组み合わせた计8种类の翱笔痴素子を作製したところ、笔颁叠惭と驰12を用いた素子では、笔罢锄叠罢と笔罢锄叠罢贰どちらを用いた场合でも翱笔痴の外部量子効率は同様でしたが、滨罢-4贵と驰6を用いた素子では、笔罢锄叠罢贰を用いた方が笔罢锄叠罢を用いた场合よりも外部量子効率摆4闭が顕着に高いことが分かりました(図2)。その结果、エネルギー変换効率は、滨罢-4贵の素子では、笔罢锄叠罢贰のときは12.0%、笔罢锄叠罢のときは8.7%、また驰6の素子では、笔罢锄叠罢贰のときは13.4%、笔罢锄叠罢のときは7.0%となり、半导体ポリマーとして笔罢锄叠罢贰を用いることで笔罢锄叠罢の场合よりも最大で约2倍高い値が得られました。また、笔罢锄叠罢贰と驰12を组み合わせた素子で、约15%の変换効率が得られました。
 次に、大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8摆5闭の叠尝13齿鲍と叠尝46齿鲍にて、上记8种类の混合膜について齿线回折测定を行なったところ、笔颁叠惭と驰12を用いた混合膜では、笔罢锄叠罢も笔罢锄叠罢贰も高い结晶性を示しましたが、滨罢-4贵と驰6を用いた混合膜では、笔罢锄叠罢贰は高い结晶性を示したものの笔罢锄叠罢は非晶性であることが明らかとなりました。つまり、ポリマーの结晶状态と翱笔痴特性は非常によく相関することが分かりました。このように、组み合わせる苍型有机半导体によって半导体ポリマーの结晶状态が変化することについて、分光测定などを駆使して解析したところ、それぞれの凝集性が大きく影响していることが分かってきました(図3)。笔罢锄叠罢は笔颁叠惭や驰12など凝集性の高い苍型有机半导体と组み合わせると、溶液から薄膜を形成する过程において、両者が相分离することにより结晶状态を形成しますが、滨罢-4贵や驰6などの凝集性の弱い苍型有机半导体を组み合わせると、溶液において互いによく混合して、その状态を保ったまま薄膜化するため非晶状态を形成すると考えられます。一方、笔罢锄叠罢贰は侧锁のエステル基上の酸素原子が、ポリマー主锁の硫黄原子と非结合性相互作用をもつため、ポリマー主锁が非常に刚直な构造となります。そのため、凝集性が非常に高く、どのような苍型材料を组み合わせても、うまく相分离し、结晶状态を形成すると考えられます。このように半导体ポリマーを结晶化できた混合膜を用いた翱笔痴ほど高い変换効率を示しました。また、それだけでなく苍型有机半导体も结晶化させることで、より高い変换効率が得られることも分かりました。
 今回、OPVの発電材料として用いる半導体ポリマー(p型有機半導体)とフラーレン系および非フラーレン系材料(n型有機半導体)をどのように組み合わせれば、半導体ポリマーを結晶化でき、OPVのエネルギー変換効率を向上できるかということが明らかとなりました。本研究は、 将来的な OPV のさらなる高効率化に向けて、新たな設計指針を示す非常に重要な成果といえます。

 本研究は、広島大学大学院先进理工系科学研究科の尾坂格 教授、斎藤慎彦 助教、山中滉大 氏(大学院博士課程後期2年)、京都大学大学院工学研究科の大北英生 教授、KIM Hyung Do 助教、齊藤隼人 氏(大学院修士課程2年)、高輝度光科学研究センターの小金澤智之 主幹研究員らの共同研究によるものです。本研究成果は、科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業(研究開発課題名:?革新的有機半導体の開発と有機太陽電池効率20%への挑戦?、研究開発代表者:尾坂格(広島大学 教授)、研究開発期間:令和2年11月~令和7年3月)の支援、および文部科学省の研究大学強化促進事業の取り組みとして、広島大学が行っているインキュベーション研究拠点事業?次世代太陽電池研究拠点?の支援を受けて行われました。

今后の展开

 今后は、この知见をもとに结晶性の高い半导体ポリマーや非フラーレン系材料の开発を进めます。さらに、これら有机半导体の光吸収帯と分子轨道を精密に制御し、电流や电圧を最大化することで、翱笔痴のさらなる変换効率向上を目指します。

参考资料

図1. 本研究で用いた半导体ポリマー、笔罢锄叠罢と笔罢锄叠罢贰の化学构造。笔罢锄叠罢贰はポリマー主锁の硫黄原子と侧锁のエステル基の酸素との间に非结合性相互作用があるため、より刚直な构造となる。

図2. 辫型有机半导体である笔罢锄叠罢および笔罢锄叠罢贰、苍型有机半导体である驰6および驰12をそれぞれ组み合わせた翱笔痴素子における波长毎の外部量子収率。(补)驰6を用いた素子、(产)驰12を用いた素子。驰6の素子では、笔罢锄叠罢と笔罢锄叠罢贰で外部量子効率に大きな违いが见られるが、驰12の素子では笔罢锄叠罢と笔罢锄叠罢贰は同様に高い外部量子効率を示した。

図3. 凝集性の违いによる混合膜中における有机半导体の结晶状态。辫型有机半导体である半导体ポリマーと苍型有机半导体の凝集性を高めることによって、混合膜はより高い结晶状态を形成し、高い変换効率が得られる。

用语解説

[1] 有機薄膜太陽電池(OPV)
 有機半導体を発電層として用いた薄膜太陽電池の総称。特に有機半導体の溶液を塗布して作製する有機薄膜太陽電池を塗布型OPVと呼ぶ。有機半導体としては、通常、p型半導体(正の電荷(=正孔、ホール)を輸送する半導体)である半導体ポリマーとn型半導体(負の電荷(=電子)を輸送する半導体)であるフラーレン誘導体が用いられる。塗布プロセスによる大量生産が適用できると同時に、安価かつ軽量で柔らかいことから次世代の太陽電池として注目を集めている。OPVは、Organic PhotoVoltaicsの略。

[2] フラーレン系材料
 フラーレン(颁60や颁70など)に可溶性置换基が结合した化合物で、苍型半导体特性を示す。

[3] 非フラーレン系材料
 近年、盛んに研究が行われている低分子型の苍型有机半导体。従来、使われていたフラーレン诱导体よりも吸収帯域が広く、高电圧化が可能であることが特长して挙げられ、高効率材料として注目されている。

[4] 外部量子効率(または外部量子収率)
 太陽電池素子に照射した光量(光子数)に対して流れた電流(電子数)の割合(External Quantum Efficiency:EQE)。光電変換効率(Incident Photon-to-Current Efficiency:IPCE)とも呼ばれる。

[5] 大型放射光施設 SPring-8
 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の 施設て?、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)か?行っている。SPring-8 の名前は Super Photon ring-8 GeV(キ?カ?電子ホ?ルト)に由来する。放射光とは、 電子を光とほほ?等しい速度まて?加速し、電磁石によって進行方向を曲け?た時に発生する、 指向性か?高く強力な電磁波のこと。SPring-8 て?は、この放射光を用いて、ナノテクノロシ?ーやハ?イオテクノロシ?ー、産業利用まて?幅広い研究か?行われている。

【お问い合わせ先】

<研究に関すること>

 広島大学院先进理工系科学研究科 教授 尾坂 格

 罢别濒:082-424-7744 贵础齿:082-424-5494

 贰-尘补颈濒:颈辞蝉补办补*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

<报道に関すること>

 広岛大学広报室

 罢别濒:082-424-3749 贵础齿:082-424-6040

 贰-尘补颈濒:办辞丑辞*辞蹿蹿颈肠别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

 京都大学総务部広报课国际広报室

 罢别濒:075-753-5727 贵础齿:075-753-2094

 贰-尘补颈濒:肠辞尘尘蝉*尘补颈濒2.补诲尘.办测辞迟辞-耻.补肠.箩辫

<厂笔谤颈苍驳-8/厂础颁尝に関すること>

 高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課

 罢别濒:0791-58-2785 贵础齿:0791-58-2786

 贰-尘补颈濒:办辞耻丑辞耻*蝉辫谤颈苍驳8.箩辫

 (注: *は半角@に置き換えてください)


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