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【研究成果】タンパク質上の糖鎖合成はゴルジ体のどこで行われる? 最新技術で明らかにしたゴルジ体の真の姿 ~糖鎖合成異常から起こる病気の診断、治療法開発に期待~

本研究成果のポイント

  • 主な細胞小器官のゴルジ体※1が小さな単位 (「ゴルジユニット」と命名)から構成され、ゴルジユニットの中を糖鎖合成酵素※2の更に小さい集まり(「ゾーン」と命名)が動き回ることを発見
  • これまでゴルジ体の中の糖鎖合成酵素の正確な位置は不明だったが、今回、糖鎖合成酵素の遺伝子に蛍光分子などを挿入し、高性能な光学顕微鏡による観察を行うことで、正確な分布や動きの観察が 可能に
  • タンパク质への糖锁合成の异常によって起きる病気の诊断、治疗への応用に期待

概要

 大阪大学大学院医学系研究科の國井政孝  講師、鷲見拓哉助教、原田彰宏教授(細胞生物学)らの研究グループは、ゴルジ体が小さな単位 「ゴルジユニット」から构成され、その中を糖锁合成酵素の更に小さい集まり「ゾーン」が动き回ることを明らかにしました
 タンパク质への糖锁合成は、タンパク质の机能に必须であることが知られています。主要な细胞小器官であるゴルジ体は糖锁をタンパク质上に合成する场ですが、これまで糖锁を合成する酵素がゴルジ体のどこに分布するか解明されていませんでした。
 今回、研究グループは、理化学研究所光量子工学研究センター生细胞超解像イメージング研究チームの中野明彦副チームリーダーらと共同で、生きた细胞に対して、ゴルジ体中の糖锁合成酵素の局在を高い空间?时间分解能を持つ顕微镜(超解像顕微镜※3)で観察することにより、ゴルジ体が小さな単位「ゴルジユニット」から构成され、そのユニットの中を糖锁合成酵素の更に小さい集まり「ゾーン」が动き回ることを解明しました。今回の発见により、糖锁を合成する酵素がゴルジ体のどこに位置するかがわかり、タンパク质上の糖锁合成のメカニズムの解明に繋がることが期待されます。

図1.ゴルジ体の新しい姿

 本研究成果は、2024年5月27日(月)に英国科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」(オンライン)に掲载されました。本研究成果について、6月21日(金)11时からオンラインにて记者発表を行います。
 是非ともご取材くださいますよう、よろしくお愿いいたします。

研究の背景

 タンパク质上の糖锁合成はタンパク质の机能に必须です。これまで、ゴルジ体は糖锁をタンパク质上に合成するための细胞小器官であることが知られていました。しかし、糖锁を合成する酵素がゴルジ体のどこに位置するかについては正确に知るための手段がなく、これまでほとんど解明されていませんでした。

研究成果の内容

 研究グループでは、最先端の遗伝子导入法(颁搁滨厂笔搁/颁补蝉9法)と高い空间?时间分解能を持つ超解像顕微镜を用いてゴルジ体が以下の性质を持つことを明らかにしました。
①ゴルジ体が小さな単位「ゴルジユニット」から构成され、それらのゴルジユニットが切断、融合、変形などダイナミックに変化しながらゴルジ体全体を构成すること
②ゴルジユニットの中を、糖锁合成酵素が、更に小さい集まり「ゾーン」となって动き回ること
③ゾーンの大きさや分布は糖锁合成酵素の种类によって异なること
④小さなゾーンはゴルジユニット同士がくっついていると、その间を移动できるが、大きなゾーンは移动できないこと
ゴルジユニット同士が离れると、小さなゾーンがユニット间を移动できなくなり、糖锁合成に异常をきたすこと。
これらの知见は全く新しいゴルジ体の姿を示すもので、今后の生物学研究へ大きなインパクトを与えるものと期待されます。

 

本研究成果が社会に与える影响(本研究成果の意义)

 本研究成果により、これまで不明だったタンパク质の糖锁修饰のメカニズムが明らかになり、糖锁异常による疾患への応用が期待されます。今回、特に、ゴルジ体のユニットがバラバラになると糖锁合成に异常をきたし骨や软骨の形成の异常につながる可能性を示しました。そのような病気の原因解明や治疗への応用が期待されます。

特记事项

 本研究成果は、2024年5月27日(月)に英国科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」(オンライン)に掲载されました。
タイトル:“Dynamic movement of the Golgi unit and its glycosylation enzyme zones”
著者名:Akihiro Harada1*(責任著者), Masataka Kunii1*, Kazuo Kurokawa2*?, Takuya Sumi1*(*第一共著者), Satoshi Kanda1, Yu Zhang1, Satomi Nadanaka3, Koichiro M Hirosawa4, Kazuaki Tokunaga5, Takuro Tojima2, Manabu Taniguchi1, Kenta Moriwaki1, Shin-ichiro Yoshimura1, Miki-Yamamoto Hino6, Satoshi Goto6, Toyomasa Katagiri7, Satoshi Kume8, Mitsuko Hayashi-Nishino9, Miyako Nakano10, Eiji Miyoshi11, Kenichi G N Suzuki4,12, Hiroshi Kitagawa3, Akihiko Nakano2
所属:
1. 大阪大学 大学院医学系研究科 细胞生物学
2. 理化学研究所 光量子工学研究センター
3. 神戸薬科大学 生化学研究室
4. 岐阜大学 细胞生物物理学教室
5. ニコンイメージングセンター
6. 立教大学理学部 生命理学科分子生物学
7. 医薬基盘?栄养?健康研究所 创薬デザイン研究センター 生体机能分子制御プロジェクト
8. 理化学研究所 生命机能科学研究センター
9. 大阪大学 产业科学研究所
10. 広島大学 统合生命科学研究科
11. 大阪大学 大学院医学系研究科 保健学専攻分子生化学
12. 国立がん研究センター研究所 先端バイオイメージング研究分野


顿翱滨:
 本研究は、科研费(重点领域研究「オルガネラゾーン」及び基盘研究叠)の一环として行われ、前页に记した多くの共同研究者の协力を得て行われました。

 

用语解説

※1 ゴルジ体&苍产蝉辫;
真核生物の细胞の主な细胞小器官の1つ。扁平な袋状の膜构造(槽と呼ばれる)が重なって出来ており、细胞外へ分泌されるタンパク质に糖を结合させ(糖锁修饰)、タンパク质の目的の场所への分别?输送が行われ、タンパク质の移动の起点となる。
※2 糖锁合成酵素&苍产蝉辫;
糖锁とはグルコース(ブドウ糖)などの糖が锁状につながったものを指し、糖锁合成酵素は糖転移酵素とも呼ばれ、细胞内でタンパク质などの上に糖锁を结合させたり、伸ばしたりする酵素である。
※3 超解像顕微镜
従来の光学顕微镜が持つ限界を超えた分解能(计测できる一番小さな长さ)を発挥する光学的手法全てを指す。本研究では主に、理化学研究所光量子工学研究センター生细胞超解像イメージング研究チームで开発された厂颁尝滨惭という高速超解像顕微镜を使用して、生きた细胞を高い“时间?空间解像能”で解析している。
 

【原田彰宏教授のコメント】
どの位の量のタンパク质が细胞内にあれば、また、どのような分子をタンパク质に付ければ顕微镜で検出可能か、过去の情报が殆どなく、最初から手探りで调べざるを得なかったのが一番苦労した点でした。この研究で、ゴルジ体の构造やその中の糖锁合成酵素の分布を初めて解明できたため、生物学全般、ひいては医学に与える影响は非常に大きいと考えています。

参考鲍搁尝

原田彰宏教授 研究者総覧
URL

【お问い合わせ先】

<研究に関すること>
原田彰宏(はらだあきひろ)
大阪大学 大学院医学系研究科 細胞生物学 教授 
TEL: 06-6879-3210  FAX: 06-6879-3213
E-mail: aharada@acb.med.osaka-u.ac.jp

広島大学大学院 统合生命科学研究科 生物工学プログラム 准教授 
中ノ 三弥子(なかの みやこ)
TEL:082-424-4539 (直通) 
E-mail: minakano@hiroshima-u.ac.jp

<报道に関すること>
大阪大学 大学院医学系研究科 広报室
TEL: 06-6879-3387  
E-mail: medpr@office.med.osaka-u.ac.jp

医薬基盤?健康?栄養研究所 戦略企画部 広報チーム
罢贰尝:072-641-9832
贰-尘补颈濒:辫谤蔼苍颈产颈辞丑苍.驳辞.箩辫

理化学研究所 広报室 报道担当
罢贰尝:050-3495-0247
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