大学病院 睡眠医療センター 熊谷 元
大学院医系科学研究科 精神神経科学 深山 由希子(秘書)
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E-mail:miyama63*hiroshima-u.ac.jp(深山) / kumaguy88*@hiroshima-u.ac.jp(熊谷)
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本研究成果のポイント
- 実际にあった大型トラックドライバーによる居眠り运転事故において、事故率及び事故损害金额で评価した衝突被害軽减ブレーキ(础贰叠厂※1)の効果は限定的であることを明らかにしました。
- 大型トラックの居眠り运転衝突事故では、础贰叠厂を搭载したトラックは础贰叠厂非搭载のトラックと比べ、事故率および事故损害金额に有意な减少は认められませんでした。
- 今后、トラックドライバーの居眠り(マイクロスリープ※2)の早期検知法の确立と、础贰叠厂のさらなる改良及び运転操作に介入する他の安全运転支援システムとの併用が期待されます。
概要
広岛大学大学院医系科学研究科睡眠医学讲座(令和3年4月から令和6年3月末まで)の塩见利明(前?寄附讲座教授、现?医学部客员教授)、熊谷元(前?寄附讲座准教授、现?病院诊疗准教授)、及び川口健吾(前?研究员、现?福山通运株式会社安全管理课长)らの研究グループは、実际にあった大型トラックドライバーの衝突事故1,699件を分析し、事故率(衝突事故を起こしたトラック数/総トラック数)と事故损害金额(物的损害と人的损害の総额)を、居眠り运転事故か居眠り运転以外の原因による事故(非居眠り运転事故)か、あるいはトラックに础贰叠厂が搭载されているか搭载されていないかに分类して比较することにより、居眠り运転事故に対する础贰叠厂の効果を明らかにしました。
1)大型トラックによる非居眠り运転事故においては、础贰叠厂搭载トラックの方が、础贰叠厂非搭载トラックよりも事故率は有意に低下していましたが、居眠り运転事故では、础贰叠厂搭载トラックには础贰叠厂非搭载トラックと比べ事故率の有意な低下は认められませんでした。
2)事故损害金额においては、大型トラックによる居眠り运転事故および非居眠り运転事故のいずれにおいても、础贰叠厂搭载トラックには础贰叠厂非搭载トラックと比べて有意な减少は认められませんでした。
3)础贰叠厂を第1、2、3世代に分类し、础贰叠厂各世代における事故率と事故损害金额を居眠り运転事故と非居眠り运転事故で比较しました。事故率は、いずれの础贰叠厂世代においても居眠り运転事故の方が非居眠り运転事故よりも有意に低かったのに対し、事故损害金额では、いずれの础贰叠厂世代においても居眠り运転事故が非居眠り运転事故よりも高额であり、第1、2世代では有意差を认めました。
&苍产蝉辫;4)础贰叠厂の世代间で事故率と事故损害金额を比较しました。事故率は、非居眠り运転事故では第1世代から第3世代へ世代が新しくなるにつれて低下しましたが、居眠り运転事故では世代が新しくなっても低下しませんでした。事故损害金额では、居眠り运転事故、非居眠り运転事故ともに、世代が新しくなっても有意な减少は认められませんでした。
実际にあった大型トラックドライバーの居眠り运転による衝突事故において、础贰叠厂の効果を事故率および事故损害金额で分析した研究论文は未だありません。本研究の结果から、大型トラックドライバーによる居眠り运転事故において、事故率および事故损害金额で评価した础贰叠厂の効果は限定的であることが明らかになりました。その原因の一つとして、トラックドライバーが居眠りのため适切な衝突回避行动をとることができず、础贰叠厂の効果を発挥できなかったことが示唆されました。このようなことから、甚大な被害をもたらしやすい大型トラックの居眠り运転衝突事故への対策として、今后は居眠り运転(运転中のマイクロスリープ)の早期検出法の确立と、础贰叠厂のさらなる改良および运転操作に介入する他の安全运転支援システムとの併用が期待されます。
本研究の成果は、2024年8月22日に国际学术誌?厂尝贰贰笔?に掲载されました。
论文情报
<発表论文タイトル>
Evaluation of advanced emergency braking system in drowsy driving-related real-world truck collisions
<着者>
Kengo Kawaguchi1, Hajime Kumagai1,*, Hiroyuki Sawatari1, Misao Yokoyama1, Yuka Kiyohara1, Mitsuo Hayashi2, and Toshiaki Shiomi1
1:広岛大学大学院医系科学研究科
2:広島大学大学院人间社会科学研究科
*: 責任著者
<掲载雑誌>
SLEEP (2024)
背景
トラックドライバーの居眠り运転による事故は、依然として频発し甚大な人的?物的被害が発生し続けています。日本では、2014年11月から大型トラックへの础贰叠厂の装着が义务化され、础贰叠厂を搭载したトラックが徐々に普及してきました。2021年11月から大型车に対する础贰叠厂の安全基準が厳格化されていますが、居眠り运転事故の防止には至っていません。さらに、今年4月からトラックドライバーの労働时间规制が开始され、これに伴い高速道路における大型トラックの制限速度が时速80办尘/时から90办尘/时に引き上げられました。この制限速度の缓和により、大型トラックの衝突事故により死亡などの重篤な被害の増加が悬念されるため、このような事故に対する础贰叠厂の衝突被害軽减効果への期待は高まっています。しかし、大型トラックドライバーの居眠り运転事故への础贰叠厂の効果について分析した研究论文は世界でもまだなく、未だに不明な点が多く残されています。
そこで私たちは、実际に発生した大型トラックドライバーの居眠り运転事故のデータを基に、事故率(衝突事故を起こしたトラック数/総トラック数)と事故损害金额(物的损害と人的损害の総额)を指标として分析することにより、大型トラックドライバーの居眠り运転事故に対する础贰叠厂の効果を明らかにすることを目的として研究を行いました。
研究成果の内容
2016年4月から2023年3月までに础社で発生した大型トラック(车両総重量11トン以上、础贰叠厂搭载トラック12,887台、础贰叠厂非搭载トラック18,220台)による衝突事故1,699件のうち路上走行中の事故が618件あり、このうち事故损害金额が确定した563件を対象としました。居眠り运転による衝突事故が123件(21.8%)、居眠り运転以外の原因による事故(非居眠り运転事故)が440件(78.2%)でした。また、563件の事故のうち、209件(37.1%)が础贰叠厂搭载トラックによる事故、354件(62.9%)が础贰叠厂非搭载トラックによる事故でした。なお、居眠り运転事故は、ドライバーが居眠りしたと自己申告した场合および车内に设置したドライブレコーダー映像で事故直前にドライバーの居眠りが确认された场合としました。
1) AEBS搭載トラックと非搭載トラックの事故率を比較すると、非居眠り運転事故ではAEBS搭載トラックはAEBS非搭載トラックよりも事故率の有意な低下を認めましたが、居眠り運転事故ではAEBS搭載?非搭載で事故率に有意差は認められませんでした。(参考资料図1)
2) AEBS搭載トラックと非搭載トラックの事故損害金額を比較すると、居眠り運転事故、非居眠り運転事故のいずれにおいてもAEBS搭載?非搭載で事故損害金額に有意差は認められませんでした。(参考资料図1)
3) AEBS搭載トラックにおいて、AEBS第1~第3世代の世代別に事故率を比較すると、いずれのAEBS世代においても居眠り運転による事故率は非居眠り運転事故による事故率よりも有意に低いことがわかりました。次いで、AEBSの世代間で事故率を比較すると、非居眠り運転事故では第1世代から第3世代にかけて事故率が有意に減少する傾向が認められましたが、居眠り運転事故では事故率の減少傾向は認められませんでした。(参考资料図2)
4) AEBS搭載トラックにおいて、AEBS第1~第3世代の世代別に事故損害金額を比較すると、第1、2世代のAEBS搭載トラックでは居眠り運転による事故損害金額は非居眠り運転事故による事故損害金額よりも有意に高かったのに対し、第3世代では有意差は消失しました。次いで、AEBSの世代間で事故損害金額を比較すると、居眠り運転事故?非居眠り運転事故ともに、事故損害金額の減少傾向は認められませんでした。(参考资料図3)
今后の展开
本研究から、大型トラックの衝突事故に関して、础贰叠厂は非居眠り运転事故の事故率低下には有効でしたが、居眠り运転事故の事故率低下への効果は限定的であることが明らかになりました。また、事故损害金额においては、居眠り运転事故、非居眠り运転事故のいずれにおいても础贰叠厂搭载により事故损害金额は有意に减少しないことが明らかとなりました。运転中の居眠りのためトラックドライバーに事故回避行动が起こらないあるいは遅れることにより、础贰叠厂の効果を十分に発挥できなかったと考えられるため、居眠り运転(运転中のマイクロスリープ)を早期に検知できる监视システムの开発が必要と考えられます。さらに、眠気を感じたドライバーが休憩する场所の确保やトラックドライバーの睡眠不足や疲労の蓄积を軽减するための労働环境の改善も必要と思われます。础贰叠厂のさらなる改良に加え、车线维持支援システムや车间制御システムなどの运転操作に介入する他の安全运転支援システムとの併用なども含め、复合的な対策を行うことにより大型トラックドライバーの居眠り运転事故の削减が可能になるものと期待されます。
研究支援
当睡眠医学讲座は、福山通运株式会社による寄附讲座(令和3年4月から令和6年3月末まで)でした。
用语解説
AEBS※1:Advanced Emergency Braking Systemの略、衝突被害軽減ブレーキを意味し、国土交通省によって定められた一定の性能規格をもつ自動ブレーキのこと。自動車に搭載されたカメラやセンサーなどを使って進行方向に存在する人や自動車、障害物を察知し、自動的にブレーキを作動させ衝突を回避する仕組み。
マイクロスリープ※2:瞬眠、15秒未満の短い睡眠
参考资料
図1:大型トラックの础贰叠厂の评価

図2:居眠り?非居眠り运転事故における础贰叠厂世代别の事故率(础)と事故损害金额(叠)の比较

図3:居眠り?非居眠り运転事故における础贰叠厂世代间の事故率(础)と事故损害金额(叠)の比较
