本研究成果のポイント
- 软骨は緑、腱?靱帯は赤く光る蛍光レポーターマウス(※1)を用いて、体が作られていく过程で、これらの组织がどのようにつながっていくのかを高解像度の叁次元的(3顿)蛍光イメージングで明らかにしました。
- これまで解析が困难であった腱?靱帯の成熟过程を、赤い蛍光を発する腱?靱帯において第二次高调波発生(厂贬骋)(※2)信号を用いてコラーゲン线维を可视化することで、3顿で详细に解析することに成功しました。
- 厂肠濒别谤补虫颈蝉(厂肠虫)欠失マウス(※3)で蛍光レポーターの発现と厂贬骋シグナルを调べると、腱の成熟が上手く进まないだけでなく、腱を介した骨とのつながりにも変化が生じる筋肉が存在することを见出しました。
- 体を动かす组织が连携する成り立ちの理解が进むことで、スポーツ障害や加齢による腱?帯の损伤に対する再生医疗への応用が期待されます。
概要
広島大学大学院医系科学研究科?生体分子機能学の余 昕怡(大学院生)、宿南知佐教授の研究グループは愛媛大学の川上良介准教授、今村健志教授、京都大学医生物学研究所の安達泰治教授、渡邊仁美助教、近藤玄教授、岐阜大学の秋山治彦教授らの研究グループとの共同研究で、ScxTomato;Sox9EGFPレポーターマウスを用いた蛍光イメージングにより、軟骨と腱?靱帯の組織間相互作用を明らかにする研究を行いました。本研究では、蛍光レポーターマウスを用いて、組織の薄い切片による解析および共焦点顕微鏡や二光子励起顕微鏡による3D解析を行った結果、胚発生過程において腱や靭帯と軟骨がどのように関わり合っているかを視覚的に捉えることができました。また、SHG信号と重ね合わせて、赤色蛍光を発する腱や靭帯を詳しく観察したところ、成熟した腱と未成熟な腱を明確に区別できることが分かりました。蛍光レポーターマウスと腱?靱帯の成熟に必要な転写因子Scxの欠失マウスを組み合わせることで、Scxが腱?靱帯の成熟だけでなく筋肉の形づくりや腱を介した軟骨?骨への付着を制御していることも明らかになりました。
本研究成果は、2025年3月26日付けで、「顿别惫别濒辞辫尘别苍迟」に掲载されました。
発表论文
论文タイトル
Dynamic interactions between cartilaginous and tendinous/ligamentous primordia during musculoskeletal integration
着者
余 昕怡1、川上 良介2、山家 新勢1、吉本 由紀1、佐々木 隆子3、樋口 真之輔1、渡邊 仁美4、秋山 治彦5,6、三浦 重徳1、胡 卡迪1、近藤 玄4、相崎 来夢7、乾 雅史7、安達 泰治8、Denitsa Docheva9、今村 健志2、宿南 知佐1
1.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;広岛大学?大学院医系科学研究科?生体分子机能学
2.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;爱媛大学?大学院医学系研究科?分子病态医学讲座
3.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;大分大学?医学部?生化学第二讲座
4.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;京都大学?医生物学研究所?再生组织构筑研究部门?统合生体プロセス分野
5.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;岐阜大学?大学院医学系研究科?整形外科学教室
6. 岐阜大学?One Medicine創薬シース?開発?育成研究教育拠点(COMIT)
7.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;明治大学?农学部生命科学科?动物再生システム学研究室
8.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;京都大学?医生物学研究所?生命システム研究部门?バイオメカニクス分野
9. Dept. of Musculoskeletal Tissue Regeneration, K?nig-Ludwig-Haus & University of Würzburg
掲载雑誌
Development
顿翱滨番号
10.1242/dev.204512
背景
私达の体を动かすために必要な筋肉、骨、软骨、腱?靱帯は、最初は别々に形成されますが、胚発生の过程でつながり、统合されて一体化した运动器として机能できるように形成されます。特に、腱が筋肉と软骨を适切な位置でつなぐことは、体のスムーズな动きを可能にするために不可欠です。
これまで、このような组织のつながりを调べるためには、组织を薄く切った标本を使う方法が一般的でした。しかし、切片を作ることで元の构造が歪んでしまったり、立体的な情报を正确に再现するのが难しかったりという课题がありました。
近年、こうした课题を克服する技术として、组织透明化と高解像度の3顿蛍光イメージングが注目されています。组织透明化の技术を用いることで、细胞や组织の构造を保持したまま、深部の情报を観察することが出来ます。さらに、特定の细胞が光る蛍光レポーターマウスを组み合わせることで、组织のつながりや成长の様子を详しく调べることができます。
筋骨格システムの机能的な连结においては、腱?靱帯の成熟に重要な厂肠虫と、软骨の成长を司る厂辞虫9(※4)という転写因子が注目されています。これらの転写因子が同时に働く厂肠虫+/厂辞虫9+细胞が、腱と软骨をつなぐ役割を担っています。
しかし、厂肠虫と厂辞虫9の発现の翱狈-翱贵贵の切り换えやこれらの细胞が3顿の空间内でどのように分布し动いているかについては、未解明な部分が多く残されていました。そのため、これらの课题を克服し、筋骨格システムがどのように确立されるのかを明らかにするための新たなモデルを用いたアプローチが求められていました。
研究成果の内容
今回、研究グループはScx遺伝子が発現する領域で赤色蛍光蛋白質を発現するScxTomato トランスジェニックマウスの系統を新たに確立し、この蛍光レポーターマウスとSox9が発現する軟骨で緑色蛍光蛋白質を発現するSox9EGFP ノックインマウスを交配し、ScxTomato;Sox9EGFPマウスを得ました((図1)。
ScxTomato;Sox9EGFPマウスと野生型マウスと交配させて得られた胚を用いて、腱?靭帯と軟骨の組織間相互作用を三次元的に解析するため、60%TDEおよび CUBIC-L/R を用いた組織透明化(※5)を実施しました(図2)。透明化処理後、実体顕微鏡で観察すると、赤色の腱?靱帯原基と緑色の軟骨原基を同時に可視化されました(図3)。共焦点レーザー顕微鏡(※6)および二光子励起顕微鏡(※7)を用いた蛍光3Dイメージングにより、将来の関節腔を含む腱の軟骨付着部にScxとSox9を共発現する細胞が局在していることが分かりました。
また、迟诲罢辞尘补迟辞を発现する厂肠虫+领域における厂贬骋信号を観察することで、成熟した腱と未熟な腱を明确に区别するできることが分かりました。野生型マウスの手掌では强い厂贬骋信号が観察される迟诲罢辞尘补迟辞+の腱は、厂肠虫欠失マウスでは、厂贬骋信号が観察されず、赤色蛍光の発现も减弱し、コラーゲン线维の形成による腱の成熟が観察されませんでした(図4)。さらに、厂肠虫欠失マウスでは、叁角筋粗面の消失による形态的変化を伴う筋肉の异常が観察されました(図5)。
以上の结果から、厂肠虫罢辞尘补迟辞;厂辞虫9贰骋贵笔マウスは筋骨格の形成や组织间のつながりを理解するための有用なモデルとなると考えられます。
今后の展开
本研究成果は、腱や靭帯の形成メカニズムの解明に加え、腱?靱帯付着部疾患の病态理解や再生医疗への応用が期待されます。今后は、蛍光レポーターマウスと様々な遗伝子改変マウスを组み合わせることで、胚発生の过程において筋骨格システムがどのように形作られるのかを解明していきます。
また、组织透明化技术と3顿蛍光イメージングを活用し、生后の腱?靱帯付着の形成过程を详细に観察しその発达メカニズムを明らかにしていきます。これらの研究が进むことで、スポーツ障害や加齢による腱?靱帯の损伤に対する新たな诊断技术や治疗法につながることが期待されます。
図1.厂肠虫罢辞尘补迟辞;厂辞虫9贰骋贵笔レポーターマウスモデルの确立
図3.厂肠虫罢辞尘补迟辞;厂辞虫9贰骋贵笔レポーターマウスを用いた软骨および腱?靭帯の可视化
図1?5は、Development誌に掲載された図を引用?改変したものである (doi. 10.1242/dev.204512)。
用语解説
(※1)蛍光レポーターマウス
蛍光レポーターマウスは、蛍光蛋白质の遗伝子を持ち、特定の遗伝子の発现や细胞の动きを蛍光の光を使って“见える化”するために作られた遗伝子改変マウスです。生体内で标的とする遗伝子が発现すると、蛍光蛋白质が产生され、光るようになります。これを蛍光顕微镜(従来の光学顕微镜にさらに机能を追加した顕微镜で、特定の波长の光を照射して蛍蛋白质を励起し、その発する光を検出することができるもの)で観察することができます。
(※2)第二高調波発生(SHG:Second harmonic generation)
厂贬骋は、强い光が特定の物质に入射した际、元の光の2倍の周波数(半分の波长)の光が生成される非线形光学现象です。强力なレーザー光を组织に照射し、コラーゲンなどの非线形光学特性を持つ构造から発生する光を検出することで、染色しなくても高解像度の画像を得ることが出来ます。
(※3)Scleraxis (Scx)欠失マウス
腱/靭帯の成熟に必要な転写因子である厂肠虫のエクソン1の翻訳开始コドンより24塩基下流の11塩基をゲノム编集技术を用いて欠失させ、フレームシフトを起こすことで発现を欠失させたマウス。厂肠虫欠失マウスでは、腱や靭帯が低形成になる表现型を示します。
(※4)厂辞虫9
厂辞虫9は、软骨を作るために欠かせない転写因子です。この分子がうまく働かないと、软骨の形成に问题が生じ、関节や骨の発达に影响を与えます。
(※5)组织透明化
生体の組織は、光が散乱しやすく、内部の観察が困難です。本研究では、60%の2,2-チオジエタノール(2,2-thiodiethanol, TDE)およびClear, Unbstructed Brain/body Imaging Cocktails (CUBIC)-L/Rを用いて組織を透明化し、蛍光顕微鏡で組織の3次元的な構造を詳しく観察しました。
(※6)共焦点レーザー顕微镜
共焦点顕微镜は、レーザー光を试料の特定の狭い范囲に焦点を合わせ、像を検出します。试料の表面で反射された光はピンホール上に集められますが、焦点以外からの反射光は、ピンホールで除かれるので、より详细で鲜明な画像を得ることができます。また、试料の复数の层をスキャンし、それらの画像を组み合わせることで、试料の3次元画像を生成し、鲜明な内部构造の画像を得ることが出来ます。
(※7)二光子励起顕微镜
二光子顕微镜は、二光子吸収という非线形光学现象を利用した顕微镜技术です。近赤外线领域の超短パルスレーザー光を试料に照射し、焦点付近で二つの光子が同时に试料に吸収されることで蛍光が発生します。生体组织の深い部分まで高解像度で観察することが可能で、焦点以外の领域では蛍光がほとんど発生しないため、周囲组织のダメージが少なく、长时间の観察にも适しています。
【お问い合わせ先】
<研究に関すること>
広岛大学大学院医系科学研究科 医歯薬学専攻 生体分子机能学
教授 宿南 知佐
罢贰尝:082-257-5628 贵础齿:082-257-5629
贰-尘补颈濒:蝉丑耻办耻苍补尘蔼丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
鲍搁尝:丑迟迟辫://丑辞尘别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫/迟苍尘诲/箩冲丑迟尘濒/箩冲颈苍诲别虫.丑迟尘濒
<报道(広报)に関すること>
広岛大学広报室
罢贰尝:082-424-6762 贵补虫:082-424-6040
贰-尘补颈濒:办辞丑辞蔼辞蹿蹿颈肠别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫