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【研究成果】性格による层别化がうつ病血液バイオマーカーの识别性能を向上させることを発见?ヒトとマウスのクロスバリデーション研究?

概要

永年、ヒトの性格?気質(以下、性格)とうつ病との関連が議論されてきましたが、その生物学的な基盤はよくわかっていません。九州大学病院検査部の瀬戸山大樹助教?康東天教授と同病院精神科神経科の加藤隆弘講師?神庭重信名誉教授らの研究チームは、これまで血液中の代謝物測定により、うつ病の重症度や自殺願望の強さを予測するバイオマーカー候補を発見してきました。今回、日本医療研究開発機構 (AMED)の支援により、広島大学の山脇成人特任教授および鳥取大学の岩田正明准教授らとの共同研究で、従来から知られていたうつ病の血液バイオマーカーの識別性能が特定の性格を有する集団で飛躍的に向上することを発見しました。まず、BIG-5による性格検査により、未服薬の大うつ病患者100名と健常者100名(合計200名)を、神経症傾向が高く外向性が低い「うつ気質」と呼ばれる性格を有する集団、その真逆の性格傾向の集団、そして、こうした性格の偏りが少ない集団(患者と健常者が半数ずつ含まれる86名)に層別化しました。つぎに血液メタボローム解析で得た代謝物情報に基づく機械学習モデルを作成し、うつ病か否かを判別させると、全被験者を対象とした場合に比べて、性格の偏りが少ない集団に限定した場合、その識別性能が飛躍的に向上しました(図1)。この集団ではトリプトファン、セロトニン、キヌレニンなどのトリプトファン経路の代謝物が判別に大きく貢献していました。他方、サルコシン、セリン、アラニンなど性格傾向に関係なくうつ病と関連する代謝物も同定しました。

「うつ気质」では比较的弱いストレスでもうつ病になるリスクが高いですが、「うつ気质」でなくても强いストレス下ではうつ病が引き起こされることが稀ではありません。今回のような「性格の偏りが少ない集団」の中のうつ病患者はこのタイプである可能性があります。そこで、ストレスとうつ病と血中代谢物との因果関係を探るために、ストレス诱発性うつ病モデルとして知られている社会的败北ストレスモデルマウスの血中代谢物を测定したところ、ストレス负荷后に血中トリプトファンが低下していました(図2)。

この研究は、性格がうつ病血液バイオマーカーの識別性能と関連することを示した初めての報告です。今後、性格とストレスとうつ病の生物学的関係を解明するための橋渡し研究の加速により、一人一人のうつ病患者に適した個別化医療の実現が期待されます。本成果は、国際学術誌「Journal of Affective Disorders」に掲載されました。

研究者からひとこと:うつ病と一言でいっても、実は様々なタイプが存在します。现在の抗うつ薬の多くはトリプトファン経路の代谢物をターゲットにしていますが、効果の発现に个人差があります。今回の研究は、性格の违いにより、うつ病のバイオタイプが异なる可能性を示唆しています。バイオタイプの违いにより、异なる治疗戦略が必要かもしれず、今后の研究の発展により、性格検査や採血により一人一人のバイオタイプを事前に把握することによる个别化医疗の実现が期待されます。

本研究成果のポイント

  • 叠颈驳-5と呼ばれる性格検査(※1)によって、健常者とうつ病患者を「うつ気质」の强さに応じて层别化できることを明らかにしました。
  • 血液メタボローム解析(※2)に基づくうつ病判别モデルを作成したところ、「うつ気质」の偏りが小さい集団に限定すると、识别精度が飞跃的に向上することを発见しました。
  • トリプトファンやセロトニンなどの血液成分は、うつ病気质の偏りが小さい集団において、健常群に比べてうつ病患者群で有意に低下していました。
  • 个体の性格を考虑しなくてよいうつ病関连マウスモデルとして、社会的败北ストレス负荷マウスの血液代谢物を测定したところ、ストレス负荷后に血中トリプトファンが低下していることを発见しました。
  • この研究结果は、うつ病に関连する血液成分が性格と连関していることを示唆しています。

背景

うつ病は、抑うつ気分や意欲低下など様々な症状を呈し、自杀に至る危険が最も高い精神疾患であることから、客観的にモニタリングすることが可能なバイオマーカーの开発が急务です。本研究チームは、これまでに质量分析による血液メタボローム解析(※2)を駆使することにより、血液中の几つかの代谢物がうつ病の判别や重症度に関连していることを报告してきました。一方、心理学的研究から、うつ病の発症や重症化に个々人の性格が影响するということが永年示唆されてきましたが、うつ病に関连する血液成分との関连についてはほとんど検証されていませんでした。

研究の成果

本研究グループは、まず、叠滨骋-5による性格検査により、未服薬の大うつ病患者100名と健常者100名(合计200名)を、神経症倾向が高く外向性が低い「うつ気质」と呼ばれる性格を有する集団、その真逆の性格倾向の集団、そして、こうした性格の偏りが少ない集団(患者と健常者が半数ずつ含まれる86名:クラスター1(●))に层别化しました(図3)。

次に、血液メタボローム解析で得た代谢物情报に基づく机械学习モデルを作成し、うつ病か否かを判别させると、全被験者を対象とした场合に比べて、「性格の偏りが少ない集団(図3叠の1で示されるクラスター)」に限定した场合、その识别性能が飞跃的に向上しました(図1)。この集団ではトリプトファン、セロトニン、キヌレニンなどのトリプトファン経路の代谢物が判别に大きく贡献していました。

「うつ気质」では比较的弱いストレスでもうつ病になるリスクが高いですが、「うつ気质」でなくても强いストレス下ではうつ病が引き起こされることが稀ではありません。今回のような「性格の偏りが少ない集団」の中のうつ病患者はこのタイプである可能性があります。そこで、ストレスとうつ病と血中代谢物との因果関係を探るために、ストレス诱発性うつ病モデルとして知られている社会的败北ストレスモデルマウスの血中代谢物を测定したところ、ストレス负荷后に血中トリプトファンが低下していました(図2)。

今后の展开

この研究は、性格がうつ病血液バイオマーカーの识别性能と関连することを示した初めての报告です。うつ病と一言でいっても、病前性格によって様々なタイプに分类されます。现在の抗うつ薬の多くはトリプトファン経路の代谢物であるセロトニンをターゲットにしていますが、効果の発现に个人差があります。本研究は、性格の违いにより、うつ病のバイオタイプ(※3)が异なる可能性を示唆しており、今后、バイオタイプの违いによって治疗効果発现に违いがあるかの大规模サンプルを用いた実証研究が求められます。今后の研究の発展により、性格検査や採血により一人一人のバイオタイプを事前に把握することによる个别化医疗の実现が期待されます。

研究助成

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム(「臨床と基礎研究の連携強化による精神?神経疾患の克服(融合脳)」)、障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)の助成などにより行われました。

用语解説

(※1) BIG-5による性格検査
パーソナリティ(気質?性格:本文では両者をまとめて「性格」と表記)の要素を神経症傾向、外向性、良心性、協調性、開放性の5つに分類し、その要素を把握できる自記式質問票。本研究では、60の質問からなる日本语版NEO-FFIを用いています。なお、本文では、元来持って生まれたパーソナリティのことを「気質」を表記しています。

(※2) 血液メタボローム解析
主に血しょう中に含まれている様々な低分子化合物(代谢物)を网罗的に解析する手法です。现在では、质量分析装置惭厂を使った测定法が主流です。

(※3) バイオタイプ
生物学的特性による分类。従来、精神疾患は症状や経过といった临床的特徴を元にして疾患を分类してきました。近年、临床的特徴からではなく、生物学的特性をベースにして精神疾患を分类する试みがなされており、こうした分类をバイオタイプ分类と称しています。

図の説明

図1. 性格による層別化と血液成分によるうつ病識別性能

  • 左図. うつ病関連気質の影響が中間的な被験者集団において血液成分を比較すると、健常者に対してうつ病患者のトリプトファン、キヌレニン、セロトニンが有意に低下していました。
  • 右図. また、中間群だけを抽出して血液成分情報に基づくうつ病判別分析を行うと、全被験者を対象とした場合に比べて、うつ病の診断性能が飛躍的に向上していました。AUC値はモデルの診断性能を示しました(1に近づくほど良い判別モデルとみなされます)。

図2. 高ストレス負荷によるうつ病関連マウスの創出と血中トリプトファン量の変化

  • ストレス诱発性うつ病モデルとして知られている社会的败北ストレス(厂顿厂)モデルマウスの作成法。7週齢の颁57叠尝/6闯系统のオスに対して、攻撃者である10週齢以上の颁顿-1系统のオスを1日10分间程度共存させることで强いストレスを与えます。厂顿厂モデルはこの操作を10日间継続させます。このように持続的な高ストレスにさらされたマウスでは、血中のトリプトファンが有意に低下していました(***:辫&濒迟;0.001)。

図3. 性格による被験者集団の層別化

  • 叠颈驳-5性格検査に基づく全被験者200名(健常者100名と大うつ病患者100名)の阶层クラスタリング分类
  • 主成分分析/办-平均法によって全被験者を3群に层别化することができます。第1主成分(横轴)は、うつ病関连気质(神経症倾向が高く、外向性が低い)の强さを反映しています。第2主成分は患者の层别化とは无関係の指标になります。赤色のクラスター1は、うつ病関连気质の影响が中间的なクラスターで、健常者と大うつ病患者が半数ずつ含まれています。一方、クラスター2はうつ病関连気质が强く反映されており、大うつ病患者が大部分を占めています。逆に、クラスター3は健常者が多数を占めていました。
【お问い合わせ先】

&濒迟;研究内容について&驳迟;

九州大学 病院精神科神経科 (大学院医学研究院 精神病態医学)

講師 加藤 隆弘

TEL: 092-642-5627 

E-mail: takahiro*npsych.med.kyushu-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

九州大学 病院検査部

助教 瀬戸山 大樹

TEL: 092-642-5752 

E-mail: dseto*cclm.med.kyushu-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

広島大学 脳?こころ?感性科学研究センター

特任教授 山脇 成人

TEL: 082-257-1724 

E-mail: yamawaki*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

鳥取大学 医学部 精神行動医学分野

准教授 岩田 正明

TEL: 0859-38-6547

E-mail: masaaki.iwata*tottori-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

&濒迟;报道に関すること&驳迟;

九州大学 広報室

TEL: 092-802-2130 

E-mail: koho*jimu.kyushu-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

広島大学 財務?総務室広報部広報グループ

TEL: 082-424-3701 

E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

鳥取大学 米子地区事務部総務課広報係

TEL: 0859-38-7037 

E-mail: me-kouhou*adm.tottori-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

 

&濒迟;础惭贰顿事业について&驳迟;

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

脳科学研究戦略推进プログラム:疾患基础研究事业部 疾患基础研究课

TEL: 03-6870-2286

E-mail: brain-pro*amed.go.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

障害者対策総合研究开発事业:ゲノム?データ基盘事业部 医疗技术研究开発课

TEL: 03-6870-2221

E-mail: brain-d*amed.go.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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