<研究に関すること>
広岛大学両生类研究センター 井川 武
罢别濒:082-424-5284
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<报道に関すること>
広岛大学 広报室
罢别濒:082-424-3701
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(注: *は半角@に置き換えてください)
体に害を及ぼすような高温を感じとり、逃避する行动応答は、环境の温度変化に対応するために欠かせません。动物は进化の过程で高温の感じ方を変化させ、多様な温度环境に适応していますが、どのように进化の过程で高温の感じ方と逃避行动を変化させてきたのか、その仕组みの详细は分かっていませんでした。
今回、自然科学研究機構 生理学研究所/生命創成探究センターの齋藤茂助教、富永真琴教授、広島大学 両生類研究センターの井川武助教、岩手医科大学 医歯薬総合研究所ゲノム?オミックス解析センターの小巻翔平副センター長、および鳥取大学農学部の太田利男教授の研究グループは、両生類種のオタマジャクシの高温逃避行動が進化の過程で生息環境に合わせて大きく変化してきたこと、また、その変化に高温センサー分子が関わることを明らかにしました。本研究結果は、Molecular Biology and Evolution誌(2022年8月22日web先行掲載)に掲載されます。
近年、温暖化による気候変动により、热波のような极端な気象が増えています。极端な高温や低温は细胞、组织に大きなダメージを与え、时に生死にかかわることから、危険な温度を感じ、逃避する行动応答は动物が生き抜くうえで欠かせないものです。一方で、动物は进化の过程で多様な温度条件の环境に适応してきました。异なる温度环境に适応した动物种の间では高温の感じ方が异なることはこれまで知られていましたが、进化の过程でどのように温度の感じ方が変化してきたのか、また进化的変化を生み出す分子メカニズムは分かっていませんでした。
まず、研究グループは、日本在来で、様々な地域に生息する5种の両生类种(カエル)のオタマジャクシを用い(図1)、それぞれの种のオタマジャクシが嫌いな温度(忌避温度)を调べました。その结果、氷が张るような早春に产卵するニホンアカガエルにおいて忌避温度が最も低く、天然の温泉が流れる沢でも成育できるほどの高温耐性を持つリュウキュウカジカガエルにおいて、忌避温度が最も高いことが分かりました(図2)。
これまでの多くの研究では、忌避温度のほかにも、オタマジャクシが正常な姿势を保ちながら游泳することができる最高温度(临界最高温度)も高温耐性の指标として调べられています。そこで、忌避温度と临界最高温度を各种で比较した结果、忌避温度の种间の违いは约15℃もあるのに対して、临界最高温度の违いは约6℃ほどであり、忌避温度は临界最高温度より进化の过程で大きく変化してきたことが分かりました(図2)。これらの结果から、逃避行动は柔软に変化する要素であり、生息地の环境に适応する过程で重要な役割を担ってきたと考えられます。
この种ごとに异なる忌避温度は、进化の过程で长い时间をかけて変化したと考えられますが、个体が経験する温度の违いによっても、忌避温度は変化するのでしょうか?まず、オタマジャクシが実际に経験する温度を调べるため、生息地において継时的温度测定を行った结果、水温は昼夜で大きく変动しながら、春から夏にかけて徐々に上昇しました。しかし、同じ地域に生息する异なる种の间では产卵の时期や生息环境が异なることにより、オタマジャクシが経験する温度が异なることが分かりました。
そこで、同一种のオタマジャクシを异なる温度で饲育し、経験による忌避温度の変化を计测しました。その结果、リュウキュウカジカガエルのオタマジャクシの忌避温度は26℃饲育で约36℃でしたが、35℃饲育では43℃と约7℃も上昇しました(図3)。この结果から、个体の経験によっても忌避温度が変化することが明らかになりました。実际、时に40℃程度まで上昇する浅い水たまりに生息するリュウキュウカジカガエルは、たとえ周辺に温度が低い场所がある场合でも、多数のオタマジャクシが38℃ほどの高温の场所で観察されました(図4)。リュウキュウカジカガエルのように高温に曝されることが多い种では、忌避温度を环境条件に応じて调节し、高温条件では暑い场所も避けないようになると考えられます。
さらに研究グループは、このような高温からの忌避行动の分子メカニズムを明らかにするため、高温を感じ取る际に重要な罢搁笔础1(トリップ?エイワン)というセンサー分子が、忌避温度の违う种间で机能的に违いがあるのかどうか、调べました。その结果、罢搁笔础1の温度刺激に対する反応は、忌避温度が最も低いニホンアカガエルで最も大きかった一方で、忌避温度がもっとも高いリュウキュウカジカガエルの罢搁笔础1は高温の刺激に対してほとんど反応しませんでした。高温に鋭敏に応答し、低めの温度で忌避行动を示す种ほど、罢搁笔础1の温度応答性が高く维持されており、着しい高温耐性を持つリュウキュウカジカガエルでは罢搁笔础1の温度応答性がほぼ失われていることが分かりました(図5)。これらの结果より、高温逃避行动に罢搁笔础1が関わっていることが示されました。
今回の研究により、生息环境によって、オタマジャクシの嫌いな温度が异なること、またその违いには罢搁笔础1が深く関わっている可能性が高いことが明らかになりました。本研究の成果は、野外で観察される生态的特性の种间の违いについて行动レベル、更には温度センサー分子レベルにわたり包括的に解明したものであり、动物の环境适応机构の理解につながると考えられます。
注1)临界最高温度:环境の温度を徐々に上昇させていった时に、动物が正常な姿势で行动できなくなる温度。オタマジャクシの场合は、游泳中にふらつく、または仰向けになった时点の温度。急性の高温耐性の指标として様々な动物で调べられている。
注2)TRPA1:Transient Receptor Potential Ankyrin 1の略称。TRPA1は感覚神経の細胞膜に発現し、温度センサー分子として機能するイオンチャネル。複数の脊椎動物種において高温刺激によって活性化されると開口し、神経細胞内に陽イオンを流入させ、感覚神経を発火させる役割を持つ。
本研究は文部科学省科学研究费补助金の补助を受けて行われました。
1.异なる种の両生类の逃避行动は生息地の温度环境に応じて大きく変化してきた。
2.高温からの逃避行动は、同一种であっても个体が経験してきた外界の温度に応じて変化する。
3.高温センサー分子の机能変化が逃避行动の种间の违いを生み出した。
(図1:日本在来のカエルの繁殖期と产卵する水场の多様性)
本研究に用いた5种のカエルは繁殖时期が早春から盛夏まで异なり、また、产卵する水场も多様です。开けた环境の水たまりでは日射により水温が変动し、特に夏期には水温が高くなることもあります。リュウキュウカジカガエルは南西诸岛に分布しますが、他の4种は本州、四国、九州に広く分布し、同じ域で见つかることも多くあります。
(図2:オタマジャクシの忌避温度は5种のカエルの间で大きく异なっていた)
オタマジャクシが嫌いな温度(忌避温度)を决定するための実験装置を新たに开発しました(左上)。左右の部屋を异なる温度に维持し、オタマジャクシを自由に游泳させ、左侧、中央、右侧に滞在した时间を8分间计测します。左図の例は、左侧を约29℃、右侧を约40℃に设定し、动画解析により各场所にいた时间を计测したものです(左下)オタマジャクシが滞在した时间を色で示しています(赤に近い色の场所ほど长く滞在した)。29℃の部屋に比べて40℃の部屋に滞在した时间が短くなっています。左右の部屋を様々な温度に设定し、行动を観察することでオタマジャクシが避ける温度を5种のカエルで决定しました。忌避温度は28℃(ニホンアカガエル)から43℃(リュウキュウカジカガエル)まで5种の间で大きく异なっていました。忌避温度の种间の违いは临界最高温度のそれよりも2.6倍ほど大きいものでした(右)。
(図3:リュウキュウカジカガエルのオタマジャクシは饲育温度によって嫌いな温度が大きく変化する)
リュウキュウカジカガエルのオタマジャクシを35℃で1日饲育した后に、逃避行动を観察すると、40℃の部屋をほとんど避けなくなりました。図はオタマジャクシが滞在した时间を色で示しています(赤に近い色の场所ほど长く滞在した)。35℃で饲育したオタマジャクシは40℃の部屋に滞在した时间が26℃饲育のものより明らかに长くなっています。
(図4:リュウキュウカジカガエルのオタマジャクシは生息地で激しい温度変化に曝される)
鹿児岛県のトカラ列岛?口之岛でリュウキュウカジカガエルの野外调査を行いました。リュウキュウカジカガエルが生息する浅い水たまりに温度ロガーを设置し、継时的に温度测定を行いました(左図の矢印)。水たまり水温は日射により上昇し、昼夜で20℃以上温度が変动することがあり、最高で约40℃に达することもありました(右下)。水温が上昇している时に観察すると、山侧から流れ込む水の温度が低いため、水たまりに急激な温度勾配が生じ、水温が低い场所もありましたが(中央、サーマル画像)、38℃ほどの水温が高い场所にも多数のオタマジャクシが确认されました(右上、オタマジャクシの位置を星印で示した)。
(図5:忌避温度の低い种ほど罢搁笔础1の高温応答反応が大きい)
罢搁笔础1は感覚神経で温度センサー分子としてはたらくイオンチャネルです。温度刺激によって罢搁笔础1が开くとイオンが神経内に流入し、感覚神経を活性化させます(左)。両生类の罢搁笔础1は热刺激で活性化します。高温刺激に対する罢搁笔础1の反応の大きさを3种のカエルで比较すると、忌避温度が低い种ほど强く反応することが分かりました(右)。アカ:ニホンアカガエル、カジカ:カジカガエル、リュウ:リュウキュウカジカガエル
近年、温暖化によって极端に热くなる日が増えています。分布域が重なる动物种の间でも生态的な特性や生息环境の违いにより忌避温度に大きな差があることから、温暖化によって受ける影响が异なると予测されます。本研究により、多くの动物种が共存するためには変化に富む多様な环境が维持されることが重要であることが改めて示されました。本研究の成果は温暖化が动物に与える影响の予测や、种の保全を考虑する际に有益な情报となると考えられます。
<研究に関すること>
広岛大学両生类研究センター 井川 武
罢别濒:082-424-5284
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(注: *は半角@に置き換えてください)
掲載日 : 2022年08月31日
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