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【研究成果】天の川の?あやつり糸?の断层撮像に初めて成功――叁次元磁场构造の初観测で天の川银河の构造形成の谜に迫る――

発表のポイント

  • これまで全く知られていなかった天の川银河の涡巻き腕内部の磁场构造を、叁次元的に测定することに初めて成功しました。
  • 予想に反し、天の川に沿った面から大きく倾いた滑らかな磁场构造が、折り重なるように存在することを初めて明らかにしました。
  • 今回确立した磁场构造の断层撮像技术を用いて、今后天の川の中で活発な星形成を引き起こすガスが集积する过程を、観测的に明らかに出来ると期待されます。

天の川银河のいて座涡巻き腕内部の磁场构造を初めて叁次元的に解明

概要

 东京大学大学院総合文化研究科の土井靖生助教と、広岛大学宇宙科学センターの川端弘治教授、香川大学教育学部の松村雅文教授らによる研究グループは、天の川银河の涡巻き腕(注1)のひとつである?いて座银河腕?の内部の磁场构造を叁次元的に明らかにすることに世界で初めて成功しました。
 本研究では、いて座の天の川方向の184个の星を広岛大学かなた望远镜(注2)を用いて精密に観测しました。その结果をヨーロッパ宇宙机関が打ち上げた骋补颈补(ガイア)卫星(注3)の测定による各星までの正确な距离と组み合わせることで、?いて座银河腕?の内部の磁场が、星までの距离に応じて天の川の方向から大きく倾いて折り重なるように分布することを初めて明らかにしました(図1、図2)。それぞれの距离で、磁场は乱れることなく非常に滑らかに分布することが分かりました。
 研究グループは、天の川方向の磁场を奥行き方向に切り分けて検出する技术を初めて确立することで、これまで全く知られていなかった磁场の叁次元分布を明らかにしました。今后この手法により、天の川の中で活発な星形成を引き起こすガスの集积过程について、観测的に明らかに出来ると期待されます。

図1:いて座银河腕方向の星间磁场の向きと地球からの距离毎の分布

左図:星空画像中の白线が一つ一つの星の示す星间磁场の向き。
右図:左図の结果を各星の距离毎に分解し、それぞれの距离の磁场分布を取り出すことに成功しました。

図2:地球からの距离毎の磁场の叁次元分布

発表内容

 宇宙空间には、地球の磁场の约10万分の1程度の强度のごく弱い磁场(星间磁场)が存在します。宇宙空间に存在するガス(星间ガス)は、星间磁场の磁力线に沿って集まる倾向があります。この现象によって、星间ガスの块、いわゆる星间云(せいかんうん)が生まれます。
 星间云は、まるで磁力线に串刺しにされるように生まれ、その形状もこれらの磁力线の影响を受けます。そして星间云の中では、新しい星が生み出されます。つまり、星间磁场は、星间云の形状だけでなく、それらの中で新しい星が生まれるプロセスをも操作する?あやつり糸?と捉えることが出来ます。
 星间云が形成される际に集まる星间ガスは、磁力线に沿って集まりながら、同时に磁力线を引っ张ることで、磁力线の分布に影响を与えます。したがって、星间磁场の磁力线の配置を理解することは、新しい星を生み出すために不可欠な星间ガスの集积の过程やメカニズムを解明する上で贵重な情报源となります。
 天の川の中ではたくさんの星が活発に生み出されていますが、その内部で星间磁场がどの様に分布しているのかはこれまで分かっていませんでした。これまでの技术では、星间磁场の様子を视线方向に重なった平均値としてしか捉えることが出来なかったためです。このため天の川の磁场は、天の川に沿った方向にほぼ揃っていると考えられていました(図3)。

図3:ヨーロッパ宇宙机関が2009年に打ち上げた笔濒补苍肠办(プランク)卫星の観测した、天の川の星间云分布(カラー画像)と磁场构造(白线)。
これまでは视线上に重なった天の川の磁场の平均値を観测しており、図に示す様に、中央を左右に伸びる天の川の方向に揃った磁场构造が知られていました。今回、図中黄色枠の领域を详しく観测することで、左右方向に揃って一様に分布すると考えられていた磁场构造が、実际には距离毎に大きく倾いた复数の构造の重なりであることを初めて明らかにしました。
 

 天の川内部の磁场构造を明らかにするために、研究グループは天の川银河の涡巻き腕构造のひとつである?いて座银河腕?に着目し、この银河腕を见通す様に観测を行いました。観测には広岛大学かなた望远镜に搭载した観测装置?贬翱狈滨搁?(オニール)を用いました。この装置は広い领域の磁场构造を捉えるのに最适化された装置です。
 星からの光は、地球に届くまでの间に星间云を通过する际に、磁场の向きに垂直な方向の光の振动が抑制されることにより、磁场の向きに沿った光の振动が他の方向よりも大きな状态となります。これを?偏光?と呼びます(図4)。贬翱狈滨搁を用いてこの偏光を観测することで、星と地球の间にある磁场の様子を知ることが出来ます。しかし途中に复数の星间云が存在した场合、それぞれがどの様な磁场构造を持っているかがこれまでは分かりませんでした。
 研究グループはヨーロッパ宇宙机関の打ち上げた骋补颈补卫星で测定した星までの正确な距离を元に、様々な距离の星々の偏光観测データを组み合わせることで、途中に存在する复数の星间ガス中の磁场を正确に取り出す手法を开発しました(図4)。この手法を适用することで、天の川内部の磁场が、距离毎に揃って天の川の向きから大きく倾いた磁场が、几重にも折り重なって存在することが初めて明らかになりました。これは天の川の中でどの様に星间ガスが集积し、星を生み出すに至るのかを知るための非常に贵重な资料となります。
 今后は、滑らかな磁场构造の広がりについて详しく调査する必要があります。様々な涡巻き银河について、その涡巻き腕の内部で等间隔に星形成が进んでいる様子が観测されており、磁场构造との関连が强く疑われていますが、磁场构造が不明なために确认出来ていません。今后は観测范囲を広げて天の川の涡巻き腕内部の磁场构造を大局的に明らかにし、天の川中の活発な星形成を引き起こすガスの集积やその履歴について観测的に明らかにしたいと考えています。

図4:様々な距离の星からの光の観测による、视线上に折り重なった磁场构造の测定。

星からの光は一般に縦横全ての方向をまんべんなく含む横波ですが、これが磁场を伴った星间云を通过する际に、特定の方向に偏った横波(?偏光?)となります。复数の磁场层を横切るたびに、?偏光?の様子は少しずつ変わって行きます。距离の异なる复数の星の?偏光?を望远镜(右上:観测所全体像、右下:望远镜)で観测し、それぞれ异なる数の星间云を横切った影响を分离して取り除くことで、一つ一つの星间云の磁场构造を取り出すことが出来ます。

発表者?研究者等情报&苍产蝉辫;

東京大学 大学院総合文研究科
土井 靖生 助教

広島大学 宇宙科学センター
川端 弘治 教授
中村 谦吾 研究当时:修士课程

香川大学 教育学部
松村 雅文 教授

千葉工業大学 惑星探査研究センター
秋田谷 洋 上席研究员

サンパウロ大学 天文学?地球物理?大気化学研究所
Prof. Antonio Mario Magalh?es
Dr. Reinaldo Santos-Lima

ブラジル国立宇宙研究所 宇宙物理学研究室
Dr. Claudia Vilega Rodrigues

ラドバウド大学 数学?宇宙物理学?素粒子物理学研究所
Prof. Marijke Haverkorn

论文情报

  • 雑誌名:The Astrophysical Journal
  • 題 名:Tomographic Imaging of the Sagittarius Spiral Arm’s Magnetic Field Structure
  • 著者名:Yasuo Doi*, Kengo Nakamura, Koji S. Kawabata, Masafumi Matsumura, Hiroshi Akitaya, Simon Coudé, Claudia V. Rodrigues, Jungmi Kwon, Motohide Tamura, Mehrnoosh Tahani, Antonio Mario Magalh?es, Reinaldo Santos-Lima, Yenifer Angarita, José Versteeg, Marijke Haverkorn, Tetsuo Hasegawa, Sarah Sadavoy, Doris Arzoumanian, Pierre Bastien
  • 顿翱滨:10.3847/1538-4357/补诲0蹿别2
  • 鲍搁尝:

研究助成

 本研究は、科研费??あかり?赤外线全天サーベイデータを用いた宇宙星形成史の统一的解明(课题番号:25247016)?、??あかり?赤外线全天マップによるサブパーセクスケールの空间构造と星形成活动の解明(课题番号:18贬01250)?、?全天可视偏光サーベイで解き明かす银河系构造と宇宙突発现象のメカニズム(课题番号:18贬03720)?、?宇宙ビュアー惭颈迟补办补を用いた天文教育の构筑と小中学校の理科授业での展开(课题番号:20碍03276)?、?星形成领域の星间直线偏光叁次元空间マッピングによる尘粒子特性?磁场构造の解明(课题番号:20碍04013)?、2023年度国立天文台大学支援経费?広岛大学かなた望远镜による多波长広视野偏光観测手法の确立と银河系内星间磁场の3次元构造の解明?の支援により実施されました。

用语解説

(注1) 天の川銀河の渦巻き腕
天の川银河は全体がゆっくり回転しており、回転する方向に巻き込まれる様な涡巻き构造をしていると考えられています(?涡巻银河?と呼ばれます)。涡巻きの浓く见える部分を?涡巻き腕?と呼びます。涡巻き腕にはガスや尘が多く集まっており、この内部で盛んに新しい星が生まれています。

(注2) かなた望遠鏡
広岛大学东広岛天文台の所有する口径1.5尘の光学望远镜です。可视光?赤外线の偏光観测を広い视野で行うことに特化した観测装置?贬翱狈滨搁?(広岛大可视赤外线同时撮像装置)を用いて、星からの光が磁场の影响を受けて生ずる?偏光?を多くの星について観测しました。

(注3) Gaia衛星
ヨーロッパ宇宙机関により2013年に打ち上げられ、天の川银河内外の5亿个以上の星の正确な位置と距离を测定しています。

【お问い合わせ先】

<研究内容については発表者にお问合せください>

 東京大学 大学院総合文化研究科
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;助教 土井 靖生(どい やすお)
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;罢别濒:03-5454-6806 贰-尘补颈濒:诲辞颈*别补.肠.耻-迟辞办测辞.补肠.箩辫

 広島大学 宇宙科学センター
 センター长 教授 川端 弘治(かわばた こうじ)
 罢别濒:082-424-7371 贰-尘补颈濒:办补飞补产迟办箩*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

 香川大学 教育学部
 教授 松村 雅文(まつむら まさふみ) 
 罢别濒:087-832-1466 贰-尘补颈濒:尘补迟蝉耻尘耻谤补.尘补蝉补蹿耻尘颈*办补驳补飞补-耻.补肠.箩辫

 東京大学 大学院総合文化研究科 広報室
 罢别濒:03-5454-6306 贰-尘补颈濒:辫谤辞-飞飞飞.肠*驳蝉.尘补颈濒.耻-迟辞办测辞.补肠.箩辫

 広島大学 広報室
 罢别濒:082-424-6762 贰-尘补颈濒:办辞丑辞*辞蹿蹿颈肠别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

 香川大学 幸町地区統合事務センター事務課(北キャンパス担当)総務係
 罢别濒:087-832-1405 贰-尘补颈濒:濒蝉辞耻尘耻-肠*办补驳补飞补-耻.补肠.箩辫
 (注: *は半角@に置き換えてください)


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