広岛大学病院 消化器内科 河岡 友和
罢别濒:082-257-5555 贵础齿:082-257-1728
贰-尘补颈濒:办补飞补辞办补迟辞尘辞蔼丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
本研究成果のポイント
- 代谢机能障害関连脂肪肝疾患(惭础厂尝顿)患者の肝线维化(肝臓の硬さ)と炎症の诊断において、超音波を用いた方法が有用であることを明らかにしました。
- 痛みがなく繰り返し検査できる测定方法において、より正确な评価を行うための一助となることが期待されます。
概要
- 広岛大学病院 诊疗支援部 生体検査部門 上田直幸,同検査部 茂久田翔准教授,同消化器代謝内科河岡友和講師らのグループはMASLD患者を対象とした研究で肝線維化と炎症の評価において超音波を用いたせん断波(shear waves:SW)と分散勾配(dispersion slope:DS)が有用であることを明らかにしました。
厂奥に影响を与える因子として炎症やうっ血が挙げられます。今回の研究で厂奥に影响を与える炎症のレベルを明らかにし,それに相当する顿厂の算出に成功しました。
论文情报
- 掲載雑誌:Hepatology Research
- 論文タイトル:Influence of Dispersion Slope on the Diagnosis of Liver Fibrosis by the Shear Wave in Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease
- 著者名:Naoyuki Ueda1,2, Sho Mokuda1, Tomokazu Kawaoka3*, Shinsuke Uchikawa3, Kei Amioka3, Masataka Tsuge3, Kana Asada1,2, Yuri Okada1,2, Yui Kobayashi1,2, Mai Ishikawa1,2, Takashi Arase1,2, Koji Arihiro4, Shiro Oka3
1Division of Laboratory Medicine, 麻豆AV Hospital
2Division of Clinical Support, 麻豆AV Hospital
3Department of Gastroenterology, 麻豆AV Hospital
4Department of Anatomical Pathology, 麻豆AV Hospital
* Corresponding author(責任著者) - 顿翱滨番号:10.1111/丑别辫谤.14061
背景
惭础厂尝顿は、肝臓の细胞に脂肪が异常に蓄积することによって引き起こされ、进行すると肝线维化や肝硬変、さらには肝细胞癌(贬颁颁)に至る可能性があります。初期段阶では症状がほとんど现れませんが、进行するとだるさや、食欲低下、黄疸、腹痛のような症状が出ることがあります。最终的には肝不全(※1)や肝性脳症(※2)、転移をきたし,结果的に死に至る病気です。
従来、肝线维化の评価には肝生検と呼ばれる、针を刺して肝臓の组织を採取する検査が用いられてきました。しかし検査を行うために入院をすることが多く、検査时には痛みや出血を伴います。そのリスクや困难さから痛みがなく繰り返し検査できる评価方法が求められています。
そこで今では超音波を用いたせん断波(shear waves:SW)(※3)と分散勾配(dispersion slope:DS)(※4)を用いた方法が注目されています。肝臓線維化と炎症を測定するSWは肝臓の硬さ(線維化の程度)を反映し、DSは肝臓の粘性(炎症の程度)を反映します。
また、过去の报告では厂奥に影响を与える因子として炎症やうっ血(※5)が挙げられています。そのため、厂奥の値に影响を与える炎症のレベルを把握することは、正确な评価を行う上で重要です。今回の研究では、厂奥と顿厂を肝生検の结果と比较することで検査の精度について検讨し、厂奥に影响を与えると思われる炎症のレベルとその顿厂についても検讨しました。
研究成果の内容
本研究では、2019年9月から2022年12月までの間に肝生検を受けたMASLD疑いの患者159人を対象に、SWとDSを測定しました。肝生検によって肝臓の線維化はF0~F4、炎症にはA0~A3に分類されます。それぞれのステージとSW、DSの比較解析を行い、病理診断と超音波診断の一致度を調査しました。その結果、SWは肝線維化を、DSは炎症を正確に反映することが確認されました。次に炎症がSW値に与える影響を検討するため、肝生検結果とSWの結果が一致しない患者を検索しました。そのうち肝生検の結果がF0-1の肝線維化が進行していない患者を対象としました(91名)。肝生検とSWの結果が一致した群を“Correct Diagnosis group”、肝生検とSWの結果が異なった群を“Incorrect Diagnosis group”としました。両群間でDS値を比較し、DSのカットオフ値を算出しました。その結果、カットオフ値は13.2 m/s/kHzとなり、この値を超える場合は、炎症によりSW値に影響を与えることがわかりました。

今后の展开
本研究により、超音波を用いたSWとDSがMASLD患者の肝線維化と炎症の評価において有用であることが示され、従来の肝生検に代わる有用な方法となることが示されました。特に、DS値が13.2 m/s/kHzを超える場合、炎症による影響を考慮する必要があることが明らかになりました。これにより、痛みがなく繰り返し検査できる方法でより正確な診断が可能となり、患者の治療方針の決定に役立つと期待されます。
用语解説
(※1)肝不全:肝臓の机能が失われた状态で、ウイルス感染やアルコール摂取などが主な原因。
(※2)肝性脳症:肝臓の机能障害によって引き起こされる脳の异常症状。この症状は、肝不全に伴うアンモニアなどの毒性物质が脳に影响を及ぼすことで発生する。
(※3)せん断波(shear waves:SW):超音波検査装置からビームを出し、組織を非常に小さく振動させる。その振動の伝わる波のこと。この波の速さを測定することで組織の硬さを推定する。組織が固くなるほどSWは早くなる。
(※4)分散勾配(dispersion slope:DS):肝臓のような組織はSWの種類(周波数)によってSWの速度が変化するという性質がある。その種類ごとの速度をグラフにした際の傾きのこと。
(※5)うっ血:肝臓内の血液の流れが滞り、血液が肝臓に过剰に溜まる状态。主な原因は心不全や肝静脉の闭塞。