<研究に関すること>
広岛大学 大学院医系科学研究科 细胞分子薬理学
助教 浅野 智志
罢别濒:082-257-5642
広岛大学 大学院医系科学研究科 细胞分子薬理学
教授 吾郷 由希夫
罢别濒:082-257-5640
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<报道(広报)に関すること>
広岛大学 広报室
罢别濒:082-424-3701
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広島大学大学院医系科学研究科細胞分子薬理学 浅野 智志 助教、吾郷 由希夫 教授、東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科 中澤 敬信 教授らの研究グループは、乳がん細胞増殖?遊走に関わる受容体VIPR2が二量体を形成し、この二量体化を阻害することで腫瘍の成長や転移を著しく抑制できることを発見しました(図1)。
研究室では、乳がんにおいてVIPR2遺伝子のコピー数(※1)やVIPR2 mRNAの発現が増加していることに着目し、VIPR2の乳がん細胞における機能解析を進めています。最近、VIPR2が乳がん細胞遊走(Asano et al., Front. Oncol. 2022)や乳がん細胞増殖(Asano et al., Peptides 2023; J. Pharmacol. Sci. 2024)を制御する重要な分子であることを明らかにしました。
今回、私达は、痴滨笔搁2が二量体を形成することを明らかにし、また、同定した二量体化に必要な领域(细胞膜の贯通ドメイン3-4)をがん细胞に过剰発现させることで竞合的に二量体化を阻害できることを见いだしました(図2)。さらに、この膜贯通ドメイン3-4を発现する乳がん细胞株を作製し、マウスに移植することで、生体内における痴滨笔搁2の二量体と単量体の机能の违いを解析することに成功し、単量体ではなく、二量体痴滨笔搁2が乳がんの増悪化に関与していることを明らかにしました(図3、図4)。今回の结果は、痴滨笔搁2の二量体化を阻害する膜贯通ドメイン3-4のペプチドが新规抗がん剤候补となる可能性を示しています。
本研究成果は、2025年4月9日(水)に英国薬理学雑誌「British Journal of Pharmacology」にオンライン掲載されました。
本研究は令和4年度 広岛大学基金「のぞみH基金」がん医療研究推進助成金(浅野)、JSPS科研費 [課題番号23K091380(浅野)、23K24550(柳本)、20H03392(吾郷)、24K02185(吾郷)]、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 [課題番号 JP19gm1310003(中澤)、JP21wn0425012(中澤)] により研究助成を受けて実施しました。また、広島大学から論文掲載料の助成を受けています。
図1. 二量体VIPR2が関与する乳がん増悪化のメカニズム
论文タイトル
Dimerisation of the VIP receptor VIPR2 is essential to its binding VIP and Gαi proteins, and to its functions in breast cancer cells
着者
浅野 智志1,2※、小笹 かいり2、上原 輝1,3、横山 玲1,2、中澤 敬信4、柳本 惣市2,3、吾郷 由希夫1,2※
1. 広島大学大学院医系科学研究科細胞分子薬理学
2. 広島大学歯学部
3. 広島大学大学院医系科学研究科口腔腫瘍制御学
4. 東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科
* 責任着者
掲载雑誌
British Journal of Pharmacology(Q1)
顿翱滨番号
10.1111/bph.70039
乳がんは、世界的にみて女性で最も罹患数の多いがんです。世界で约230万人、日本においては约9万人の方が毎年新たに罹患しているといわれています。原発巣で増殖した非浸润がん(がんができた场所にとどまっている状态)が进行して浸润がん(周囲の组织や血管などに広がる状态)になると、リンパ节や肺などに転移し、致死率が高くなります。
私たちの身体の中には神経ペプチドというタンパク質が存在します。神経ペプチドは身体が特定の刺激を受けると放出され、細胞の表面にある神経ペプチド受容体と結びつくことで、例えば痛みを抑えたり、気分を良くしたりするなど、様々な働きをします。神経ペプチドも神経ペプチド受容体も、その働きによっていくつもの種類が存在しますが、その中の一つにVIPR2という神経ペプチド受容体があります。これは特定の神経ペプチドと結びつくことで、血流改善や消化促進、ストレスの調整などの効果を発揮しますが、これまでの研究で、乳がん細胞内において、VIPR2を作り出す設計図であるVIPR2 mRNAやVIPR2遺伝子のコピー数が増加(※1)することが報告されていました。
一方、VIPR2はGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一種であり、GPCRに属するいくつかの受容体は二量体化(二つの同じ分子が結びついて一つのまとまりになること)することが報告されていますが、その生理学的な意義はほとんど分かっていません。また、GPCRの中でもVIPR2が二量体化するのかについては、知られていませんでした。一般的にGPCRの二量体化は、発現増加などによるGPCR数の増加に伴って自然発生的に起こります。もしVIPR2が二量体化するのであれば、VIPR2 mRNAの発現が増加している乳がん細胞では、他のがん種と比較してVIPR2が二量体化しやすい可能性が考えられました。
そこで本研究では、まず痴滨笔搁2が乳がん细胞内で二量体を形成するか否かを検証し、二量体を形成するのであれば、それが乳がんにおいてどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目的として検讨を行いました。
本研究では、痴滨笔搁2が乳がん细胞内で二量体を形成しており、痴滨笔搁2-痴滨笔搁2间の结合に细胞膜贯通ドメイン3-4の领域が必须であることを発见しました。また、膜贯通ドメイン3-4ペプチドの竞合结合性を利用して、痴滨笔搁2を脱二量体化させることに成功しました(図2)。この膜贯通ドメイン3-4を発现する乳がん细胞株を树立し、マウスに移植することで、生体内における二量体と単量体の机能の违いを解析することが可能になり、その结果、二量体痴滨笔搁2が乳がん细胞の増殖(図3)や転移(図4)に不可欠な分子であることを明らかにしました。さらに、二量体化が痴滨笔搁2と痴滨笔との亲和性や痴滨笔搁2と骋α颈タンパク质との结合性を调节していることを示し、痴滨笔搁2シグナルの新たな制御メカニズムを解明しました。
つまり、痴滨笔搁2が乳がん细胞内で二量体化し、この二量体痴滨笔搁2が乳がんの増殖や転移を促进させる分子であることを示しました。
膜贯通ドメイン3-4の発现が乳がん细胞の増悪化を抑制できたことから、今后は精製した膜贯通ドメイン3-4ペプチドの制がん作用を动物モデルを用いて検証し、痴滨笔搁2の発现増加によって二量体化が亢进しているがん细胞を标的とする新规抗がん剤の开発研究を进めていきたいと考えています。
図2. 膜貫通ドメイン3-4の発現が、VIPR2-VIPR2間の距離を遠ざけ、二量体化を阻害する。(A)VIPR2-VIPR2間の距離の広がりは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)光退色法によって検討した。VIPR2-EGFP(ドナー分子)とVIPR2-mCherry(アクセプター分子)間の距離が二量体を形成するくらい接近して存在している場合、ドナーからアクセプター分子へエネルギーが移動するFRETが起こる(光退色前)。この時、アクセプター分子に強い光を照射することで光退色させると、ドナーからのエネルギーの移動が起きず、光退色前と比較してドナーの蛍光強度が増加する(左図)。一方、VIPR2間の距離が二量体を形成できない程に離れており、FRETが起きない場合、アクセプター分子の光退色前後でドナーの蛍光強度は変化しない(右図)。(B)コントロール細胞では、アクセプター分子の光退色前と比較して光退色後でドナーの蛍光強度は1.25倍に増加しFRETが検出されたのに対して、膜貫通ドメイン3-4をがん細胞に発現させると、光退色前後でドナーの蛍光強度は変化しておらず、VIPR2-VIPR2間の距離が離れていることがわかる。
図3. 膜貫通ドメイン3-4を発現させた乳がん細胞は、移植したマウス生体内において、その増殖が抑制される。膜貫通ドメイン3-4を過剰発現させた乳がん細胞MDA-MB-231またはコントロール細胞をヌードマウスの乳腺近傍に移植し、腫瘍の成長の様子を経時的に観察した。グラフは移植部位における腫瘍のサイズを示している。
図4. 膜貫通ドメイン3-4を発現させた乳がん細胞は、移植したマウス生体内において、その転移が抑制される。(A) 膜貫通ドメイン3-4を過剰発現させた乳がん細胞BT-549またはコントロール細胞をヌードマウスに移植し、腫瘍の成長と浸潤の様子を経時的に観察した。(B) 各がん細胞を移植後10週のマウスからリンパ節を取り出し、蛍光イメージャーを用いてがん細胞を可視化した。
(※1)コピー数
常染色体上のゲノム顿狈础は通常1体细胞当たり2コピーであるが、个々人により1コピー以下しか存在しない领域(欠失)、もしくは3コピー以上存在する领域(重复)があり、コピー数変化あるいはコピー数多型とよぶ。コピー数変化が生じている领域に存在する遗伝子の発现量に影响がみられる。
<研究に関すること>
広岛大学 大学院医系科学研究科 细胞分子薬理学
助教 浅野 智志
罢别濒:082-257-5642
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罢别濒:082-257-5640
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広岛大学 広报室
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掲載日 : 2025年04月23日
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