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第一線で活躍している研究者 先进理工系科学研究科 寺本 篤史 准教授

寺本 篤史 准教授 インタビュー

2021年度 創発的研究支援事業(JST) 採択者

微生物の力を活用して、
居住者が建筑物を爱せる仕组みをつくる

自分の家に爱着を持ち、长く住んでもらいたい

私の専门は、建筑材料や施工、维持管理です。コンクリートのひび割れ制御や施工方法の改善など、これまで建筑の性能评価、改善に関するさまざまな研究をしてきました。その中で思ったのが、「どうすれば建筑物を长く使ってもらえるのだろう、良いものをつくっているだけでは不十分なのではないか」ということです。

自宅も含めほとんどの建物の管理は、基本的には业者任せになっています。これでは、自分の家に関心が涌きにくくなってしまって当然です。しかし、もし居住者が简単に自宅の健康状态を诊断できる仕组みがあったらどうでしょう。自分の家により関心が高まり、爱着につながり、その家で长く住みたいと思う人が増えるのではないでしょうか。自身の家を育てていく感覚を共有できれば、人生が今より少し豊かになるかもしれません。今回の创発的研究支援事业(闯厂罢)では、こういったコンセプトの研究を採択していただきました。

微生物の生息状态を元に、建筑物の劣化を诊断する

先ほど述べた「居住者自身が建筑物を诊断できる仕组み」をどのように构筑するかを考えました。その际に着目したのが「微生物」です。

私が申请书を书いている当时、世の中は颁辞惫颈诲-19の笔颁搁検査真っ盛りで、人によっては毎日のように検査を行っていました。建筑物もこれぐらい手軽に検査を行えるとよいのに、という思いもあり、微生物について调べてみると、建筑物の表面にも人の体と同じようにたくさんの微生物が住んでいることが分かりました。また、微生物は表面の状态(水分量や辫贬など)が変わると种类や量が変化することも分かっていました。ここから私は、建筑物内の微生物の生息状况が分かれば、断热性や気密性、强度、耐久性といった建筑物の性能を诊断できるのではないかと考えました。本研究のゴールは、笔颁搁検査と同様に、居住者自身が劣化を手軽に调べられるようなキットを作成し、自分で家の状态を诊断できる世の中を実现することです。

しかし、建筑物と微生物の生息状况のデータは、现状ほとんどありませんので、データベース化が必要不可欠です。これまで私が実施してきた研究成果やノウハウを使うと、建筑物に様々な劣化を人為的につくり出すことができるので、その点で我々の强みを生かした研究テーマといえます。

难しいのは微生物の调査です。微生物の生息状况は地域によって异なるため、全国一律に同じような评価ができるわけではありません。今后、各地域の研究者の方々と连携して、建筑物から微生物を採取して、地域ごとにデータベース化を进める必要があります。これには多くの人手が必要です。また个人差を无くすために、サンプル採取の方法も何らかの规格を决めておかないといけません。

超えるべきハードルはいくつもありますが、ひとつずつ确実にクリアしていきたいと考えています。

建筑物から试料採取を行う様子

微生物を使って、建筑物に好きな机能を付与する

微生物の生息状况から建筑物の状态を评価するのは、あくまでも第一ステージです。この研究では一歩先も见据えています。

世の中には、さまざまな机能を持つ微生物がいます。例えば、コンクリートのひび割れを直す微生物や、匂いを放出する微生物、色を変える微生物などです。これらの特殊な微生物の机能を建筑物に付与することができれば、建筑物の性能を自身の好みに合わせて変えていけるのではないかと考えています。自分が住んでいる空间に、雾吹きのように好きな微生物を壁に吹きかけ育てていくイメージです。

想像してみてください。建筑物が劣化しているという诊断が出たら、表面を回復させる微生物を吹きかける。よりリラックスした状态で寝たいと思ったら、匂いを出す微生物を寝室の壁に吹きかける……。こういったことが可能になれば、居住者自身が自分好みの空间をつくれるようになり、建筑物への爱着も増すはずです。现在はこの想像を现実にするため、性能の付与に使える微生物の探索と、建筑材料上での生息可能性を検讨しているところです。将来的には医工连携を进めて、空気质の向上やアレルギー症状の改善など、微生物を使って居住者の健康を守ることにも発展させたいと考えています。まずは「建筑分野で微生物と言えば寺本だ」と言われることを目指して、この分野を极めていきたいです。

楽しく研究しつつ、成果を社会に还元したい

私は、「自分が楽しいと思えることを、有益な形で社会に还元する」スタイルを大事にしています。楽しそうなものを探し続けるうちに今の状态にたどり着いた、と言っても过言ではありません。

例えば、私が研究者になったのは「研究者と话すのは刺激的で楽しい」と思ったからです。実际、学生时代には「话が一番面白い先生は谁か」という视点で研究室を决めました。また、私にとっては自分の兴味?疑问を突き詰めることも楽しさのひとつです。例えば、建设会社で研究者をしていたときは、ツルツルとしたヨーグルトの盖からヒントを得て、施工时に気泡が残らないコンクリートの型枠を考案しました。

现在は、さらなる楽しさを求めて异分野交流も积极的に进めています。具体的には、生体のセンシング技术を建筑材料に応用するプロジェクトなどです。建筑は文系?理系问わずさまざまな分野と関连が深いので、その特长を生かして、今后も多くの分野とコラボレーションしたいと考えています。个人的には歴史が好きなので、建筑材料の世界史にも取り组みたいです。自分のスタンスを强みにしつつ、今后も建筑を轴としてさまざまな研究に挑戦していきます。

寺本 篤史 准教授の略歴および研究業績の詳細は研究者総覧をご覧ください。


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