湊 拓生 助教 インタビュー
2023年度 戦略的創造研究推進事業(さきがけ)採択者
多様な金属を核に持つ巨大分子をつなぎ
まったく新しい材料を生み出す
无机化学に生化学などの知见を融合
私の専门は、无机化合物の精密な合成です。无机化合物を意図どおりに精密に合成することで、新规の役立つ材料の开発を目标としています。
研究の特徴として无机化学に生化学の知见を融合することが挙げられます。今回のプロジェクトでは温泉等に生育するバクテリアからタンパク质分子を単离し无机化合物合成の反応场とすることを计画しています。子どもの顷から生物が好きでナノテクの道に进んでからも生化学に対して関心を持っていました。世界でも生化学と无机化合物の基础研究に同时に取り组む研究者は少なく、それが自分のアドバンテージとなればと考えています。
ブロックのように分子をつなぐ
现在、さきがけのプロジェクトで进める研究テーマは、「巨大多元素异种金属多核构造の逐次的精密合成」です。研究の目的は、いろんな元素を狙い通りに组み合わせた巨大分子によって有用な物质を作り出すことです。无机化合物の精密合成では配位子という入れ物に核となる金属イオンを入れる作业を行います。それは色违いのおもちゃのブロックを组み合わせる作业と似ています。ブロックを用いれば简単に意図した形を作れますし、ブロックの块を组み合わせることも容易ですが、分子で同じように意図した构造を合成することは困难です。
一般的にナノスケールのサイズの分子を、2つ以上の金属イオンを核にして设计する场合、炭素锁を骨格とする有机分子を配位子として用います。しかし有机配位子は构造が柔软であるため金属核の位置を厳密に制御できず、また导入できる金属イオンの数や种类が少ないという大きな欠点がありました。直径が5苍尘?100苍尘程の大きさのメゾスケールサイズの巨大分子の合成を意図通りに合成するのは、ほとんど不可能でした。
その课题に対し私は、刚直で安定した构造を持つ无机分子を配位子に用いて、特定の金属核を配位子中の狙った位置に入れる手法を开発しました。その方法を発展させれば、小さなブロックの组み合わせを连结することでお城のような壮大な作品を作れるように、多様な金属イオンを望んだ场所に配置した巨大分子ができるのではないか。そう考えたのが、この研究を始めたきっかけです。

金属イオンを组み合わせ合成するイメージ図
活性の高い触媒の合成が可能に
これまでの研究成果として3种类14个の金属イオンの核を、意図どおりに配置した分子の合成に成功しています。その分子を多数つなげれば活性の高い触媒や、强力な磁石、记録媒体のもととなる材料に応用できると考えています。
巨大分子触媒のメリットは、金属イオンをメゾスケールの粒子サイズで密集させることで、大量の电子とプロトンを授受できることです。それによりこれまでにない酸化还元特性が期待され、医薬品などの化学材料合成プロセスを効率化できます。
また多様な金属の活性点がある巨大分子を溶液に溶かして触媒とすれば、その活性点の数や种类の多さから、非常に活性の高い触媒となると考えられます。
分子レベルの磁性研究も视野に
また巨大分子の磁性を利用することで、まったく新しい磁気メモリ材料としての可能性も视野に入れています。従来のハードディスク等の磁気メモリはディスク表面にごく微细な磁石を并べ、その极性で0/1のデジタル情报を记忆する仕组みです。この方式は磁石の粒子を小さくするほど记忆容量が高まりますが、近年では粒子同士がノイズを与えない限界の小ささに到达しており、これ以上の记忆容量向上が难しくなっています。
私が开発を进める复数の金属核を持つ巨大分子は、従来のメモリ粒子と比べて非常に小さく、分子一つひとつに电子のスピンの向きを利用して0と1の情报を记録することができれば、これまでのメモリ材料に比べて圧倒的に単位面积あたりの记忆容量が大きいメモリ素子ができる可能性があります。
100年后の未来に役立つ材料を
分子サイズの磁性材料の磁気特性については、まだまだわからないことがたくさんあります。応用を见据えるとともに明らかになっていない、巨大分子の低温での物性についても、研究していきたいと考えています。
また、私の研究の特色である生化学と无机化学の融合に関しても、タンパク质分子を使用して异种金属多核构造を作り出す研究を进め开発につなげたいです。研究は绪についたばかりでやるべきことは山积みですが、「100年后の未来」に役立つ材料を开発したいと考えています。